2025-08-06 コメント投稿する ▼
「核のごみ」道民に問え──最終処分場選定に脱原発団体が道民投票を要望、北海道議会で陳述
処分場選定は道民全体の問題──脱原発団体が陳述
北海道寿都町と神恵内村で進められてきた高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場選定をめぐり、脱原発を訴える2つの市民団体が8月6日、道民全体の意思を問う「道民投票」の実施を北海道議会に要望した。道議会の産炭地域振興・GX推進・エネルギー調査特別委員会の委員を前に行われた陳述は非公開であったが、その後の記者会見で団体側は強い危機感を訴えた。
陳述を行ったのは「脱原発をめざす北電株主の会」などで、道議仲介のもと請願書を提出。これまで道内では放射性廃棄物の受け入れに慎重な立場が貫かれてきたこと、そしてそれを裏付ける「核のごみを道内に持ち込むことを原則として認めない」という北海道条例の存在が指摘された。
「勝手に小さな村だけで決めていい話じゃない。道民全体の問題」
「文献調査だけならOKっていう“だまし討ち”みたいなやり方は納得できない」
「核のごみを受け入れるなら、まず選挙と投票で民意を問え」
「いったん進んだら引き返せない。そんな判断を村だけにさせるな」
「原発の電気を使ってこなかった北海道が捨て場にされるなんて理不尽」
経済団体の意向ばかり反映、住民の声はどこへ?
団体側は、選定プロセスにおいて経済団体や一部首長の意見が優先され、実際に影響を受ける住民の声が無視されている構図に強く反発している。処分場が決まれば数万年単位で影響が続くのに、地元住民に十分な情報が届かず、意見表明の機会すら与えられていないという現状に、「民主主義の根幹を揺るがす事態だ」と批判の声が上がる。
「政府も道も、財界や一部有識者の声ばかり聞いて、地域住民の意思は無視されている。これでは地域振興策という名の経済的懐柔にすぎない。安全や未来の責任の話なのに、地域全体の合意形成がないまま話を進めるのは極めて危険だ」と団体関係者は語る。
経済団体の理解が「条件付き容認」のように報じられる一方で、住民全体がどう考えているかは不透明のまま。だからこそ「全道民が意思を表明できる道民投票が不可欠だ」という訴えが出るのは当然だ。
文献調査終了、次の段階へ?2町村に委ねられるのか
政府は「最終処分場選定プロセス」を三段階に分けて進めている。第1段階である文献調査を受け入れた寿都町と神恵内村は、すでに一定の報告を終え、次は「概要調査」へ進むかどうかの判断が求められている。
しかし、人口数千人規模の小自治体だけで、全国的な意味を持つ政策を決定することに対しては疑問の声が強い。「地元同意」だけで物事が進んでよいのか。ましてや、調査を受け入れることで得られる交付金目当てで住民の意見が分断されている実態も見逃せない。
請願書では、「概要調査に進むかどうかを含めて、すべての道民の意思を可視化するべきだ」と強く訴えている。
北海道条例を守らずにどうする──道議会の責任も問われる
団体側が特に重視するのは、2000年に制定された北海道の条例だ。この条例では、核のごみの受け入れについて「原則として認めない」と明記されており、道民の不安を背景に成立した経緯がある。
にもかかわらず、現在の選定プロセスは、この条例の精神と矛盾して進められている。記者会見での発言でも、「条例を無視したまま国や道が判断を進めるのなら、道議会そのものの信頼性が崩壊する」として、厳しい批判がなされた。
「地元だけじゃなく、北海道に住む全員が当事者。条例を軽視するな」
「北海道の未来を金で売るのか?その是非を住民投票で決めろ」
「道議会が無視すれば、次は道民が道議会を無視する番だ」
「捨て場」になることにNOを──全国的議論が必要
高レベル放射性廃棄物は、どの国でも頭を抱える問題だが、日本ではとりわけ議論が避けられてきた。原発の恩恵を受けた都市部ではなく、人口が少なく政治的影響力の弱い地方が候補地にされる傾向が続いている。
北海道は原発を抱えていないにもかかわらず、最終処分場の候補として何度も名前が上がっている。今回の文献調査受け入れも、一部自治体の経済的困窮に乗じた形で進められた経緯があり、「道外のごみをなぜ北海道が引き受けなければならないのか」との反発は根強い。
本来であれば、国民的議論を経たうえで、責任とリスクの所在を明確にした合意形成が不可欠だ。いま、道民投票を実施することは、単なる反対運動ではない。日本の原子力政策全体の透明性と民主的正当性を問い直す、大きな一歩でもある。