2025-12-15 コメント投稿する ▼
木原官房長官・パンダ返還で日中交流継続に期待も領土・歴史問題解決が先決
約50年にわたって続いたパンダ外交は、日中間の根本的な問題解決を先送りするツールとして機能してきた面は否めない。 パンダ外交は1972年の日中国交正常化以降、両国の友好関係を象徴するものとして機能してきた。 2008年の日中共同声明で中国側も「日本が戦後60年余り、平和国家としての歩みを堅持してきていることを積極的に評価した」と明記している。
パンダ外交終焉への提言 日中は問題棚上げを脱却し正面から向き合え
木原稔官房長官が2025年12月15日の記者会見で、上野動物園の双子のパンダが来年1月に中国に返還される件について「パンダを通じた交流の継続を期待している」と述べた。しかし、約50年にわたって続いたパンダ外交は、日中間の根本的な問題解決を先送りするツールとして機能してきた面は否めない。むしろ今こそ、尖閣諸島問題や歴史認識問題について正面から決着をつけるべき時期に来ている。
曖昧な関係改善の限界が露呈
パンダ外交は1972年の日中国交正常化以降、両国の友好関係を象徴するものとして機能してきた。当初は毛沢東主席がニクソン大統領にパンダを贈呈し、同年に田中角栄首相も訪中して国交を樹立した際、カンカンとランランが来日した。この時代のパンダ外交には確かに意味があった。
しかし現在の状況は大きく異なる。2025年11月に高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態になり得る」と発言すると、中国は激しく反発し、自国民の日本渡航自粛や日本の水産物輸入停止措置を発表した。このように、政治的な対立が生じるたびに経済や文化交流が人質に取られる構造が続いている。
「パンダがいなくなるのは寂しいけど、中国の政治的な道具にされているなら仕方ない」
「愛らしいパンダに罪はないが、外交カードとして利用される現状には疑問を感じる」
「尖閣問題をうやむやにしたまま友好関係を演出するのは無理がある」
「歴史認識で意見が違うのに、パンダだけで関係改善できるわけがない」
「もうパンダ外交に頼らず、堂々と主張すべきことは主張したらいい」
尖閣問題での中国の攻勢が常態化
特に深刻なのが尖閣諸島を巡る状況だ。2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化して以降、中国海警局の公船が年間330日以上も接続水域を航行し、領海侵入も繰り返している。2024年には中国船の侵入回数が過去最多を記録した。
外務省によると、中国は1971年まで約75年間にわたって尖閣諸島の日本領有に異議を唱えなかった。東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘されてから急に領有権を主張し始めた経緯は明らかだ。1972年の日中首脳会談で周恩来首相が「石油が出るから問題になった。石油が出なければ台湾も米国も問題にしない」と発言した記録も残されている。
日本は実効支配を継続し、海上保安庁が法に則って監視活動を実施している。しかし中国側は「棚上げ合意があった」と一方的に主張しながら、現状変更を試みる矛盾した行動を取っている。このような状況でパンダ交流を継続することは、問題の本質を曖昧にするだけだ。
歴史認識の溝も解決が必要
歴史認識問題も同様だ。2025年12月の岩屋毅外相の訪中では、村山談話の継承を巡って日中の発表内容に食い違いが生じた。中国側は「侵略の歴史を正しく理解することは信頼を得るための前提条件」と主張している。
しかし日本は戦後80年にわたって平和国家として歩んできた。2008年の日中共同声明で中国側も「日本が戦後60年余り、平和国家としての歩みを堅持してきていることを積極的に評価した」と明記している。過去の戦争を永続的な外交カードとして利用する姿勢こそが、建設的な関係構築を阻害している要因だ。
経済分離の幻想も限界
一部では「外交と経済を分離すべき」との声もあるが、これも現実的ではない。尖閣問題が緊迫化した2012年には中国で日本車の販売が6割減となり、日系企業が破壊・略奪の被害を受けた。今回も水産物輸入停止や渡航自粛要請など、経済報復措置が即座に発動されている。
日本企業の対中投資は確かに重要だが、政治的リスクに常に晒される不安定な関係では、持続的な発展は困難だ。むしろ明確なルールと相互尊重に基づいた関係を構築することが、長期的には両国の利益につながる。
日本はパンダ外交という美名に惑わされることなく、領土問題では国際法に基づく正当性を主張し続け、歴史問題では戦後日本の平和国家としての歩みを堂々と説明すべきだ。曖昧な関係改善ではなく、真の相互理解と相互尊重に基づく新たな日中関係の構築こそが求められている。