2025-10-30 コメント投稿する ▼
木原官房長官がロシア産LNG輸入継続を強調、米国圧力下での日本のエネルギー戦略
木原稔官房長官は2025年10月30日の記者会見で、ロシアの極東サハリンの開発事業「サハリン2」を含む液化天然ガス(LNG)の輸入に関し、「天然ガスの確保は日本のエネルギー安全保障上重要で、支障を来さないように万全を期す」と述べ、調達を継続する方針を示しました。 ベッセント米財務長官は2025年10月15日、日本政府に対してロシア産エネルギーの輸入停止を期待するとの立場を示し、圧力を強めています。
木原官房長官、ロシア産ガス輸入継続を強調――米国圧力下での日本の「エネルギー安保判断」
木原稔官房長官は2025年10月30日の記者会見で、ロシアの極東サハリンの開発事業「サハリン2」を含む液化天然ガス(LNG)の輸入に関し、「天然ガスの確保は日本のエネルギー安全保障上重要で、支障を来さないように万全を期す」と述べ、調達を継続する方針を示しました。この発言は、高市早苗首相が2025年10月28日の日米首脳会談でトランプ米大統領に、ロシア産LNGの輸入を当面継続する意向を直接伝えたことを受けたものです。
米国はロシアへの経済制裁を強めるため、G7各国に対しロシア産エネルギーの輸入停止を要望してきました。ベッセント米財務長官は2025年10月15日、日本政府に対してロシア産エネルギーの輸入停止を期待するとの立場を示し、圧力を強めています。しかし、日本政府は短期的な禁輸実施は困難だとの判断を維持しており、今回の官房長官の発言はその方針を改めて確認したものとなります。
日本のエネルギー調達における戦略的選択――サハリン2の重要性
日本がサハリン2からのLNG輸入継続にこだわる理由は、エネルギー安全保障上の現実的な制約にあります。サハリン2は日本のLNG総輸入量の約8~9.5パーセント、年間約600万トンを供給しており、これは日本の総発電量の約3パーセントに相当します。三井物産(12.5パーセント出資)と三菱商事(10パーセント出資)という日本企業が権益を保有し、東京ガスや東北電力などの大手企業が割安な長期契約価格で購入しており、日本国内の電力・ガス供給の安定性と料金レベルの両面で重要な役割を果たしています。
供給が途絶えた場合、日本は割高なスポット市場でLNGを買い付けざるを得なくなります。 仮にスポット価格が長期契約価格の2倍である場合、追加コストは約6700億円(USD換算:約4億5000万ドル、2025年10月30日時点)に達する見通しです。スポット価格がさらに上昇した場合には、追加コストは1兆円(USD換算:約6億7000万ドル)を超える可能性も指摘されており、日本経済全体への悪影響は深刻です。
「米国の圧力も分かるけど、日本の事情も考えてほしい。電気代やガス代が急に上がったら困る」
「サハリン2が止まったら、日本は本当に大変になりますよね。代替手段をもっと早く用意すべきだった」
「日本企業も大きく出資しているし、簡単には撤退できない。これはエネルギー安全保障の問題だから難しい判断だ」
「米国とロシアの狭間で日本は大変。正義と現実のバランスをどう取るか、首相たちは苦労しているんでしょう」
「欧州はロシア産ガスを脱却できたけど、日本は規模が違う。地政学的に中東依存を減らす戦略もあるし」
米国との同盟関係と現実的な制約の狭間
高市首相とトランプ大統領の首脳会談では、日本の防衛費積み増しやレアアース確保、アメリカへの大型投資など、多くの経済安全保障課題が協議されました。その中で、ロシア産LNG輸入の継続が明示的に議題となったことは、トランプ政権がこの問題を重視していることを示しています。ただし、高市首相が「ロシア産LNGの輸入禁止は困難である」との説明をトランプ大統領に直接伝え、理解を得たとされています。
木原氏は30日の会見で、この日米首脳会談での議論について「外交上のやりとりであり、コメントは差し控える」との立場を取りました。これは、米国との同盟関係の維持と、日本の国益(エネルギー安全保障)の確保を両立させようとする、日本政府の慎重な対応姿勢を反映しています。一方で、米国が2025年12月のサハリン2関連取引への制裁特例措置の更新時期を控えており、その結果次第では日本の選択肢が制限される可能性も存在します。
脱ロシアエネルギーの長期戦略と短期的現実
日本政府は、ロシア産原油・LNGへの依存度を長期的に低下させるため、オマーンやカタールなど中東以外の地域からの調達多角化を進めています。しかし、新たな供給源の確保には通常5~10年の期間を要するため、短期的な「脱ロシア」の実現は困難な状況が続いています。
日本のエネルギー自給率は約13パーセントに過ぎず、供給の9割以上を輸入に依存しているという根本的な制約があります。 こうした中で、日本が一方的にサハリン2からの調達を停止すれば、権益はロシアが回収し、中国などが調達先として台頭する可能性も高いという現実的な見立てもあります。木原官房長官の発言は、こうしたエネルギー政策上の複雑な判断状況を反映した、日本政府の「現実的選択」を示すものとなっています。
 
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
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