2025-09-19 コメント投稿する ▼
へずまりゅう市議の発言が問う「議会の品位」 過去事例と制度の曖昧さ
「議会の品位」という言葉は、1956年に全国市議会議長会が制定した標準市議会会議規則に盛り込まれ、以後多くの地方議会で規定された。 地方議会ではこれまでも「議会の品位」を理由とする懲罰や制限が行われてきた。 こうした事例はいずれも「議会の品位」を根拠に措置が取られている。 SNS上でも「議会の品位」の解釈をめぐって賛否が分かれ、議員の規範意識が問われている。
奈良市議会での発言が波紋
元迷惑系ユーチューバーで奈良市議のへずまりゅう氏(34)が、2025年9月12日の定例市議会で仲川げん市長に対し「どのツラ下げて」などと発言したことが議論を呼んでいる。大西淳文議長は18日に本人と面談し、議員としての礼節を重んじるよう注意を行った。問題となったのは「議会の品位」であり、この概念の曖昧さと処分のあり方が改めて注目された。
「議会の品位」という言葉は、1956年に全国市議会議長会が制定した標準市議会会議規則に盛り込まれ、以後多くの地方議会で規定された。ただし具体的な定義はなく、判断は各議会に委ねられている。地方自治法129条・132条は秩序を乱す行為や無礼な発言を禁じており、懲罰の対象となり得る。
学者の指摘と制度上の背景
大正大学の江藤俊昭教授(地方自治)は、今回の発言は「日常でも一方的な叱責は威嚇やハラスメントに当たり、公開の場での発言は問題が大きい」と指摘。同法132条違反の可能性を示し、議長によるその場での注意が適切だったとした。議会は政策を議論する場であり、建設的な議論には冷静な意見表明が不可欠だと強調している。
さらに議会の役割は、各自治体の議会基本条例や政治倫理条例、ハラスメント防止条例に定められている。議員は常にこうした規範を確認し、住民代表としてふさわしい行動を示す責務を負うとされる。
過去に問題となった「品位」事例
地方議会ではこれまでも「議会の品位」を理由とする懲罰や制限が行われてきた。2018年の熊本市議会では、市議が請願質疑中にのど飴をなめていたことが規則違反とされ、出席停止処分を受けた。2013年の大分市議会では、覆面レスラーの市議が覆面姿での活動を求めたが、運営委員会は認めなかった。
2023年には奈良県宇陀市議が不適切発言で問題視され、2024年には兵庫県知事選を巡るSNS投稿を繰り返した姫路市議が、議会の名誉を害したとして2度の辞職勧告を受けた。こうした事例はいずれも「議会の品位」を根拠に措置が取られている。
SNSと市民の受け止め
議員の発言や行動はSNSで即時に拡散され、市民の目にさらされる。今回の件についてもさまざまな意見が投稿されている。
「議員なら政策で戦うべきで怒鳴りは違う」
「市民を代表する立場であの態度は恥ずかしい」
「議会の品位という言葉自体があいまいすぎる」
「有権者の不満を代弁している面もあるのでは」
「問題提起は必要でもやり方を誤っている」
SNS上でも「議会の品位」の解釈をめぐって賛否が分かれ、議員の規範意識が問われている。
課題と展望
「議会の品位」という規定は、民主主義の場である議会の秩序を守る役割を果たす一方、抽象的で恣意的な運用の余地を残している。発言の自由と議会規律のバランスをいかに取るかは、今後の地方政治における大きな課題だ。
また、議員がSNSを活用する場面が増える中、議場外の発信が「議会の名誉を害する」とされるケースもある。今後は、各自治体が倫理条例やガイドラインをより具体化し、議員が自らの責務を果たしながら住民の信頼を確保できる制度設計が求められる。