2025-09-01 コメント投稿する ▼
地方で増えるユーチューバー議員 へずま氏当選に見る期待とポピュリズムの危うさ
地方で増えるユーチューバー議員、存在感と課題
YouTubeをはじめとするSNSで一定の知名度を誇るユーチューバーが、地方議会で当選を果たす事例が増えている。国政では数万票が必要となるが、地方選挙では千単位の得票で議席獲得が可能であり、さらに議員のなり手不足が背景にある。しかし発信力の高さは期待と同時にポピュリズム的なリスクもはらんでおり、識者からは「政策本位で選択すべきだ」との声が上がる。
へずまりゅう氏、奈良市議選で堂々3位
7月20日に投開票された奈良市議選で、迷惑系ユーチューバーとして知られたへずまりゅう氏(34)が初当選した。定数39に55人が立候補した激戦で8320票を獲得し、3位に食い込んだ。選挙戦では「つけ回されたり『奈良から出ていけ』と罵声を浴び、一度も演説できなかった」と語り、選挙カーとSNSを中心に支持を訴えた。
過去にはスーパーで代金前の魚の切り身を食べるなどの行為で有罪判決を受け、社会的批判を浴びてきた人物だけに、その当選は波紋を広げた。だが、へずま氏は「これほど多くの支持を受けた以上、期待を裏切ることなく頑張りたい」と語り、奈良公園のシカ保護活動を掲げたことが若い有権者の共感を集めた。
「迷惑行為で有名になった人が通るなんて信じられない」
「シカを守る活動に共感した。若いからこそ期待できる」
「発信力だけで議員になるのは危険だ」
「でも他の候補よりよほど名前を知っていた」
「政策をしっかり示せるならユーチューバーでも構わない」
SNS上でも賛否が分かれ、ユーチューバー議員への関心は高まっている。
他自治体にも広がるユーチューバー当選
東京都西東京市議補選では、教育系ユーチューバー「いずみん先生」こと千間泉実氏(32)が立憲民主党公認で当選。「へずま氏は第一人者だ」と評価し、ユーチューバー出身の議員が今後さらに増えるとの見方を示した。
また、神奈川県平塚市議の元島新氏(28)もユーチューブ活動をきっかけに政治家を志した。「ネットと地上戦の併用が必須」とし、へずま氏の奈良公園での活動も当選の一因だと分析。「発信力は政策を広げる武器になるが、間違った情報が拡散されれば有権者が混乱する」と危うさも指摘する。
発信力はもろ刃の剣
日本大の岩井奉信名誉教授は「ユーチューバー議員は既存政党に不満を持つ若者の受け皿になる可能性がある」としつつ、「再生回数を狙った過激な発信は逆効果になり得る。政治家としての業績が問われる」と警鐘を鳴らす。
国政レベルでは国民民主党の玉木雄一郎代表が「たまきチャンネル」で登録者61万人を抱えるなど、ユーチューブ活用が広がっている。東京都知事選で注目を集めた石丸伸二前安芸高田市長も35万人超の登録者を持ち、参政党も53万人に迫る登録者数を獲得。SNS活用は政党戦略に不可欠な要素となった。
しかし、地方議員の間では「我々のチャンネルの再生回数はたかが知れている」との声もあり、知名度や話題性に乏しい候補にとっては費用対効果が限られる。結局、強い個性や争点がなければ継続は難しいのが現実だ。
ユーチューバー議員の存在感とポピュリズムのリスク
ユーチューバー議員の増加は、政治参加の多様化として歓迎される一方、発信力の強さが「政治をショー化」させる危険性も孕む。地方政治に求められるのは地道な政策実現力であり、注目度や炎上狙いの言動では地域課題の解決にはつながらない。
議員のなり手不足という現実の中で、ユーチューバー議員が果たす役割は確かに存在する。しかし、彼らが真に評価されるのは「どんな動画を出すか」ではなく「どんな政策を実現できるか」にかかっている。