2025-08-03 コメント投稿する ▼
仙台市長選で郡和子氏が3選 無風選挙に市民のモヤモヤ、低投票率と課題が残る
郡和子氏が仙台市長選で3選 課題山積も市民は「無風」に複雑な視線
3日投開票が行われた仙台市長選挙で、現職の郡和子氏(68)が再選を果たし、3期目に入ることが決まった。郡氏は20万4844票を獲得し、対立候補である松本剛氏(8万3353票)、野田紀子氏(2万6282票)、菅原武大氏(7902票)らを大きく引き離した。
郡氏は当選後、「ダイバーシティーの推進や防災・環境都市としての整備、若者支援をさらに前に進めていく」と意欲を語り、未来の仙台市民が誇れる街づくりを目指すと述べた。
アナウンサーから国会、そして仙台市長へ
郡和子氏は仙台市出身。民放アナウンサーから政界に転身し、2005年の衆議院選挙で初当選。民主党政権では復興政務官を務めた。2017年の仙台市長選で初当選し、以後3期連続で市政を担うことになる。
ことし6月には全国市長会の副会長にも選出され、東北を代表する首長の一人としても注目を集めている。支持層には共産党、立憲民主党、社民党系の市民団体が多く、組織戦の強さが今回も光った。
無風選挙と低投票率 市民のモヤモヤ
今回の市長選では、郡氏の再選が大方の予想通りとなったが、一方で対立候補に強い求心力がなかったことも影響し、選挙戦全体は「無風」の印象が否めなかった。新人3候補はいずれも無所属で、政党の明確な支援もなく、メディア露出や浸透力に乏しかった。
ただ、前回を下回ると見られていた投票率は36.83%と、過去最低だった4年前より7.74ポイント上昇。これについては「関心がないわけではない」という市民の感覚が反映されたともいえる。
市民からは次のような声が聞かれる。
「郡さんが悪いわけじゃないけど、正直“この人でいいのか”って感覚はある」
「対立候補が弱すぎた。選択肢が少なすぎて悩むほどじゃなかった」
「女性市長として頑張っているのは評価したいが、もっと争点を明確にしてほしかった」
「3期目って長い。市政の緊張感が失われるのが心配」
「防災や街づくり、もっと根本から変えるような候補も見てみたかった」
結果として「消極的支持」による当選と見る向きもあり、市民の期待と不安が入り混じる状況となっている。
若者支援・防災強化が3期目の焦点に
郡氏が掲げる政策の柱は、「若者支援」「多様性の推進」「防災環境都市」の3つ。少子高齢化が進む仙台市において、働く世代や若者が将来を描ける都市にできるかが問われる。
また、2024年元日の能登半島地震を受けて、全国的に防災意識が高まる中、仙台市の津波・地震対策の強化も注目される。仙台は東日本大震災の経験を持つだけに、その教訓をどこまで生かせるかが市政の信頼度にも直結する。
一方で、市街地の空洞化や観光政策の立て直し、財政健全化など、先送りにされてきた課題も山積しており、3期目には「地に足のついた実行力」が求められる。
課題に向き合う市政へ “安定”だけで良いのか
郡氏の3選で市政は「安定」の形を取るが、市民の生活や地域経済が抱える問題に変化はない。「女性市長」「現職」という看板だけでは語りきれない現実の解決こそが、3期目の最大の使命となる。
また、今後の市長選のあり方も問われている。選挙が形骸化し、市政批判や代案が浮上しづらい構造が続くと、市民の政治参加意識はますます冷える。「誰にでも分かる争点」「挑戦的な政策論争」が次回以降の選挙で生まれるかどうかも、市政の健全性に関わる重要な要素となる。