2025-08-25 コメント投稿する ▼
釧路湿原メガソーラー計画、中止要請に応じず 自然保護と再エネ推進の板挟み
釧路湿原で進むメガソーラー建設、中止要請に応じず
北海道の釧路湿原周辺で進められている大規模太陽光発電所(メガソーラー)計画をめぐり、事業を担う「日本エコロジー」(大阪市)が工事中止要請に応じない姿勢を示したことが明らかになった。市議会の有志議員21人が事業停止を求める要請書を提出したが、同社は「適法かつ多大な費用を伴う事業であり、単なる中止要請には応じられない」とする見解書を市や環境省に提出している。
この事業地は国の特別天然記念物であるタンチョウや、そのひなの生息地付近に位置する。釧路湿原は国際的にも重要な自然環境として知られ、希少な動植物が多く生息することから、工事の影響に対する懸念が強まっている。
市議団の要請と企業の見解
8月15日、釧路市議会の有志21人が「日本エコロジー」など2社に対し、事業の中止を求める要請書を提出した。要請書では、環境省の釧路湿原野生生物保護センター付近で行われる工事が「希少野生生物の生息環境を破壊する恐れがある」と指摘。また、国の天然記念物であるオジロワシの生息調査が不十分である点を問題視した。
これに対し同社は20日付で見解書を提出。「市議団から正式に中止要請を受けた認識はない」と説明しつつも、「中止要請であれば受け入れは困難」と記した。さらに「環境配慮型の工事の検討要請なのか、中止そのものを求めるのかを確認したい」と表明し、事業継続の立場を鮮明にした。
自然保護と再生可能エネルギー推進の板挟み
釧路湿原は日本最大の湿原であり、世界的にも貴重な生態系を有する地域だ。その一方で、再生可能エネルギーの拡大は地球温暖化対策として不可欠とされ、国も太陽光発電導入を推進してきた。今回の問題は「環境保護」と「脱炭素」の両立の難しさを象徴している。
ネット上でも様々な意見が出ている。
「タンチョウやオジロワシを犠牲にしてまでメガソーラーを作るのはおかしい」
「再エネは必要だが、場所の選び方を間違えてはいけない」
「企業の理屈ばかりで自然が守られない」
「環境省はもっと強く関与すべきだ」
「メガソーラー利権の負の側面が露呈している」
自然保護を優先すべきという声が多い一方、再エネ推進の必要性を否定する意見は少なく、「どう両立させるか」が論点となっている。
環境影響評価の不十分さと行政の責任
今回の問題の根底には、環境影響評価(アセスメント)の不十分さがある。市議団が指摘するように、オジロワシなど希少種の調査が十分に行われていない可能性があり、国や自治体がどこまで適切に関与するのかが問われている。企業側は「適法な手続きを踏んでいる」と主張するが、法令上の基準と実際の自然環境保全のギャップは埋まっていない。
再生可能エネルギーの推進が「自然破壊」と表裏一体になるようでは、国民の理解は得られない。行政には、地域社会や自然環境に配慮した事業調整を図る責任がある。
釧路湿原メガソーラー問題と日本の再エネ政策の行方
釧路湿原でのメガソーラー計画は、日本の再生可能エネルギー政策に突きつけられた大きな課題を示している。地球環境の保全と脱炭素の推進は両立可能か。そのために必要なのは、単なる「合法」ではなく「持続可能性」を重視した判断だ。企業の利益や行政の形式的な手続きを優先するのではなく、国民や地域住民が納得できる透明性と説明責任が求められている。
今後、釧路湿原の事例は全国の再エネ事業にも影響を与える可能性が高い。自然保護と再生可能エネルギーの調和をどう実現するのか、日本全体のエネルギー政策の在り方が問われている。