2025-06-10 コメント投稿する ▼
日本学術会議法改正案に反対討論 井上哲士氏が「学問の自由の破壊」と厳しく批判
「学問の自由」を揺るがす日本学術会議法改正案 井上哲士氏が反対の論陣
日本学術会議を特殊法人化し、政府からの監視体制を強める法案が、6月10日の参院内閣委員会で、自民・公明・維新などの賛成多数で可決された。これに対し、日本共産党の井上哲士参院議員は、反対討論で「法案の本質は学術会議の独立性、自主性、自律性を根こそぎ奪い、実質的に解体するものだ」と厳しく批判し、廃案を強く求めた。
日本学術会議は戦後、学問の自由を保障する憲法23条の理念に基づき、政府から独立した立場で政策提言や調査研究を行ってきた。だが今回の法案は、その存在意義を根底から覆すものであり、専門家や関係者の間でも「憲法に反する重大な改悪だ」との声が相次いでいる。
政府の介入強化と構造改変 “学問支配”の危うさ
今回の法案では、現行の学術会議法を廃止し、学術会議を特殊法人化。さらに、首相が任命する「監事」や「会員選定助言委員会」を設け、外部からの人選介入を制度化する仕組みが導入される。この動きに対し、井上氏は「独立性を破壊する危険極まりない構造だ」と指摘し、強く反発した。
そもそも、この制度改変の発端は2020年に菅政権が行った「6人の任命拒否」問題にある。井上氏は、「任命拒否の理由や法解釈の変更過程を示す行政文書の開示を求めてきたが、政府は黒塗りのまま提出し、審議の前提すら示していない」と批判。「こんな状態での採決は言語道断だ」と怒りをにじませた。
“学術の軍事化”への警戒 声明の趣旨をねじ曲げるな
また、2017年に学術会議が出した「軍事的安全保障研究に関する声明」が議論の的となっている件についても、井上氏は明確に反論した。「声明は学問の自由を侵すものではなく、むしろ軍事介入による学問の歪みを未然に防ぐための警告だった」と述べ、声明の趣旨を「完全に履き違えている」と厳しく批判した。
同声明で問題視された防衛装備庁の研究制度では、防衛省職員が研究の進捗を管理し、成果は無償で防衛産業に提供されるという。井上氏は「こうした資金の性質が学問の自由を侵害する恐れがあるのは明白であり、学術会議が警鐘を鳴らすのは当然の責務だ」と力説した。
「独立した国家機関」で何が悪いのか 政府主張の矛盾を突く
政府は「国の機関でありながら独立して職務を行うのは矛盾だ」として学術会議を特殊法人化する必要性を訴えるが、井上氏はこれに真っ向から異議を唱えた。「学術会議は『世界の平和と人類、社会の福祉に貢献する』という国家的要請に応える組織であり、国の機関であっても、職務の独立性を保つことに矛盾はない」と反論した。
事実、諸外国においても、政府の資金援助を受けながら独立性を保つ学術機関は多数存在する。むしろ、それが現代社会における「公正な知の形成」の基盤であり、政府からの介入を防ぐ制度的担保なのだ。
井上氏は討論の締めくくりで、「学術会議を解体し、政府の都合に沿った学問だけが生き残るような体制は、憲法の理念に反する」と語り、「この法案は廃案以外に道はない」と結んだ。
ネット上でも広がる反対の声
SNS上でも、学術会議法案に対する不安と批判が噴出している。
「独立性を奪う学術会議法案、怖すぎる」
「戦前のような『御用学者』制度に戻す気か?」
「軍事研究に反対しただけで潰される。これが自由な社会なのか?」
「井上議員の討論、理路整然としていて説得力あった」
「学術会議が邪魔だから壊す。こんな政治は間違ってる」
こうした声は、単なる政争やイデオロギー対立ではなく、民主主義の根幹にかかわる「知の自由」をめぐる問題として受け止められつつある。
「学問の自由」は国家の土台 問われるのは政治の姿勢
日本学術会議は、時の政権にとって耳の痛い意見を出す存在かもしれない。だがそれこそが、本来の「知性」の役割であり、権力の暴走を防ぐ防波堤として機能してきた。その役割を弱体化させる今回の法案は、単に制度改革にとどまらず、国家と学問の関係を根本から変えるものである。
井上氏の警鐘は、こうした危機的状況に対し「いま声を上げなければ、知の独立が失われる」という強い危機感の表れだ。「学問の自由」は民主主義の要であり、知る権利・表現の自由とも深く結びついている。その柱を崩すような動きに、私たちはもっと敏感になるべきではないか。