2025-04-14 コメント投稿する ▼
京都・綾部市でPFAS汚染深刻化 倉林氏「食の安全は国際基準で」 政府の対応に課題残る
PFASとは何か
PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は、炭素とフッ素の結合を持つ人工化学物質の総称で、撥水性や耐熱性に優れ、食品包装や消火剤、撥水加工品などに広く使用されてきた。しかし、これらの物質は環境中で分解されにくく、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、人体や生態系への蓄積が懸念されている。特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、発がん性や内分泌かく乱作用などの健康リスクが指摘されている。
綾部市での汚染状況
京都府綾部市を流れる犀川やその支流の天野川では、国の暫定指針値(50ng/L)を大幅に超えるPFASが検出されている。2023年の調査では、天野川で1リットルあたり2800ナノグラム、つまり基準値の56倍以上の濃度が確認された。また、綾部市内の地下水からも170ng/LのPFASが検出され、住民には井戸水の飲用を控えるよう呼びかけられている。京都府は、汚染源として産業廃棄物処理業者の排水を指摘しており、ろ過装置の劣化によりPFASが河川に流出した可能性があると説明している。
国際基準との乖離
倉林議員は、農産物の安全性に関する明確な基準が日本には存在しないことを問題視し、国際的な安全基準に合わせる必要性を強調した。例えば、米国環境保護庁(EPA)は、飲料水中のPFAS濃度を4ng/L以下とする厳しい基準を設定しており、欧州連合(EU)でも食品中のPFASに対する規制が進んでいる。これに対し、日本の基準は緩やかであり、国際的な輸出競争力を損なう恐れがある。
自治体の対応と課題
倉林氏は、農業用地のPFAS検査を可能とする交付金が2024年度補正予算に盛り込まれたものの、自治体の実施実績がないことを指摘し、周知徹底と活用促進を求めた。また、住民が自費で民間調査を依頼するケースもあり、法的な調査権限の整備が急務とされている。
政府の対応
中田宏環境副大臣は、まずは水道水の水質基準を取りまとめると述べるにとどまり、農産物や土壌への具体的な対応については明言を避けた。一方、農林水産省は、PFASを優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質と位置付け、食品中の含有実態の把握や農業環境から農畜水産物への移行等に関する情報の収集を進めている。
住民の声と今後の展望
綾部市では、住民団体が汚染範囲の調査や流出対策を求める署名活動を行うなど、地域住民の不安と関心が高まっている。国際的な規制強化の流れを受け、日本でもPFASに対する包括的な対策と基準の見直しが求められている。今後、政府は科学的根拠に基づいた規制の強化と、住民の健康と環境を守るための具体的な施策を講じる必要がある。
- 京都府綾部市の河川や地下水から、国の暫定指針値を大幅に超えるPFASが検出された。
- 倉林明子議員は、農産物の安全性確保と国際基準に基づく対策の必要性を訴えた。
- 日本のPFASに関する基準は国際的に見て緩やかであり、輸出競争力を損なう恐れがある。
- 自治体の調査体制や住民への情報提供が不十分であり、法的な整備が求められている。
- 政府は水道水の水質基準の見直しを進めているが、農産物や土壌への対応