2025-06-17 コメント投稿する ▼
海自で食中毒疑い放置、将官を戒告処分 内部通報なき組織風土に海幕長が危機感
隊員44人が体調不良、海自で食中毒疑いの事案が放置
海上自衛隊で起きた集団食中毒の疑いをめぐり、組織内の対応のずさんさが明らかになった。海自は6月17日、適切な措置を取らなかったとして、当時の指揮官である1等海佐(54)と、その上司である海将補(54)を戒告処分にした。対象となったのは、令和5年9月14日から15日にかけての事案で、食事後に44人の隊員が腹痛などを訴えたにもかかわらず、食事提供の中止や上級部隊への報告が行われなかった。
事態が明るみに出たのは、内部からではなく外部からの情報提供によるものだった。これを受け、海上幕僚監部が調査を行い、事実関係を確認した。
「自衛隊の中でこんなことすら隠蔽されるのか」
「命を預かる組織なのに、なぜ自己申告しない?」
「食中毒ではない」と自己判断、責任の所在あいまいに
調査によれば、当該部隊の医官は体調不良を訴えた隊員について「急性胃腸炎など」と診断し、食中毒との断定には至らなかった。これを根拠に、1等海佐は「措置を取る必要はない」と判断。上官の海将補も、食事提供の中止を指示せず、上級部隊への報告も怠った。
医師の診断が公式な判断材料になりうるとはいえ、44人という大規模な症状発生を前に、報告を怠ったのは明らかに職務上の怠慢である。海上自衛隊という閉鎖的な組織で、「判断ミスを報告するリスク」を避けた可能性も指摘されている。
「軍隊は命令と報告がすべて。それを怠ったら統制が崩壊する」
「44人も体調不良なのに“胃腸炎”で片付けるのは無理がある」
海幕長「おかしいをおかしいと言える風土が必要」
この問題を受け、海上自衛隊のトップである斎藤聡幕僚長は、17日の記者会見で強い危機感をにじませた。「本来なら内部からの通報で把握すべき事案。外部からの情報で発覚するというのは極めて残念」と述べ、組織内部に“異常を異常と言いづらい空気”があることを暗に認めた。
さらに、「おかしいことをおかしいといえる雰囲気作りに努めていきたい」と表明。部隊内での自由な意見表明や問題提起がしにくい体質を改め、組織風土の改善を進める考えを示した。
「“上官に逆らえない空気”があったなら、それはもう組織として危うい」
「自衛隊も一般企業と同じく内部通報制度を強化すべきでは?」
問われる自衛隊の透明性と説明責任
自衛隊は国家の安全保障を担う一方で、国民にとってはブラックボックスになりやすい存在でもある。今回のように体調不良が集団で発生した事案が、内部報告ではなく外部からの情報提供でようやく発覚するという構図は、極めて重大な問題だ。
国民の信頼を確保するには、隠蔽体質を改め、誤りを誤りと認められる仕組みづくりが不可欠だ。防衛という特殊な任務を遂行する組織だからこそ、説明責任と情報公開の姿勢はより一層求められる。
防衛省・自衛隊は、今後こうした内部通報制度の強化や報告義務の厳格化、組織内の心理的安全性の向上といった改革を断行できるかどうかが問われている。