2025-06-10 コメント投稿する ▼
品川区が訪問介護の報酬減額を給付金で補填 緊急支援の裏に制度不備への警鐘
品川区、訪問介護の「報酬減」補填へ
訪問介護事業の継続を守れ──報酬引き下げに緊急対応、区独自の給付金で支援
報酬引き下げに危機感、品川区が緊急支援に踏み切る
東京都品川区は10日、訪問介護事業所の経営難に対応するため、国の報酬改定で削減された基本報酬の差額を独自に補填する方針を発表した。対象は区内の訪問介護事業所で、2027年度の報酬見直しまでの臨時措置として、2025年度末までの実施を予定している。
今回の制度では、1事業所あたり年間12万円から最大240万円の「安定運営支援金」が給付される見込みで、総額3930万円が補正予算として計上され、今月開会予定の品川区議会で審議される予定だ。
森澤恭子区長は同日の記者会見で、「訪問介護は高齢者を地域で支える要であり、社会インフラの一部。報酬引き下げによって小規模事業所が経営困難に直面しており、支援は急務だ」と語った。現場の疲弊ぶりが深刻であることから、「政府による実態に即した改定がなされるまで、臨時的に区が支える」との決意をにじませた。
報酬改定の影響、品川区内で深刻化
訪問介護は、通院や買い物、日常生活の支援など、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるためのライフラインともいえる。しかし、2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が実質的に引き下げられ、事業所の収益は圧迫されている。
森澤区長によれば、改定後に区内事業所の「半数以上が減収」となり、すでに4事業所が廃業に追い込まれているという。特に小規模事業者への影響は甚大で、人材確保にも支障を来している状況だ。
現場では、ヘルパーの時給引き上げ圧力と、減収との板挟みで経営破綻の危機が広がっており、このままでは在宅介護の基盤が崩壊しかねない。全国的にも同様の問題が散見されているが、品川区はこの問題にいち早く反応した形だ。
給付金での補填は「本質的な解決ではない」
ただし、この対応には限界もある。今回の補填はあくまで臨時措置であり、根本的な制度改革にはなっていない。支援金によるしのぎは短期的には必要かもしれないが、構造的な課題──すなわち国による介護報酬の適正化と、持続可能な介護制度の再構築こそが求められている。
現金給付に頼る方法は一時的な延命措置に過ぎず、本来は国が報酬体系を見直し、税制や保険制度と連動した恒常的な減税や運営補助の設計を行うべきである。自治体が独自に補填しなければならないという現状は、政府の制度設計の甘さと無策を浮き彫りにしている。
ネットでは賛否、「地方任せにするな」との声も
SNS上では今回の品川区の動きに対し、称賛と疑問の声が交錯している。
「森澤区長、素晴らしい判断。現場のことをよく分かってる」
「国の責任を地方が肩代わりする構図、これでいいのか?」
「訪問介護がなくなったら、病院と施設がパンクするぞ」
「給付金でしのいでも、人手不足は解決しない。根本から見直して」
「地方自治体の創意工夫が光るけど、中央政府が逃げてるように見える」
こうした声に共通するのは、「訪問介護の重要性」と「国の制度改革の遅れ」への危機感だ。品川区の緊急対応は高く評価される一方で、根本的な解決を政府に求める声は日に日に強まっている。
今こそ制度設計の見直しと減税による抜本改革を
訪問介護の報酬減額という問題は、単なる「地域の福祉」の話ではない。日本全体が超高齢社会に突入する中で、介護の持続可能性と制度の信頼性が試されている。
制度疲労が明らかとなった今こそ、国は給付金頼みの場当たり政策から脱却し、恒久的な減税措置を含めた介護制度の見直しに本腰を入れるべきである。特に小規模事業所が地域に不可欠な存在である以上、彼らの事業継続を支えるための税負担の軽減、事務手続きの簡素化、長期的視野に立った報酬制度の整備が必要だ。
品川区のような自治体が先陣を切って取り組む中、中央政府がいつまでも後手に回っていてはならない。自治体による努力を一過性の対応で終わらせないためにも、国の責任ある行動が今、求められている。