クマ被害死者7人で過去最多、浅尾環境相が個体数管理強化表明、仙台で緊急銃猟初実施

全国でクマによる深刻な人身被害が相次いでいます。2025年度は死者数が7人と過去最多を更新し、住宅地への出没も日常化しつつある状況です。浅尾慶一郎環境相は2025年10月17日の閣議後記者会見で談話を発表し、科学的データに基づいた個体数管理の強化を打ち出しました。こうした危機的状況の中、同月15日には仙台市で全国初となる緊急銃猟制度に基づく駆除が実施され、住民の不安に応える一歩となりました。

過去最悪のクマ被害と迅速対応の必要性

2025年度のクマによる死亡者は7人に達し、統計開始以来の最多記録を更新しました。これまで過去最多だった2023年度の6人を上回る深刻な状況です。出没件数も東北地方を中心に増加し、岩手県や秋田県では住宅地近くでの目撃が相次いでいます。

浅尾環境相は談話の中で、住民の生活圏への出没を防ぐためクマの捕獲を含めた個体数管理を一層強化する方針を明言しました。自治体が発信する出没情報に注意するよう呼びかけるとともに、科学的データに基づいた対策を進める考えを示しています。

「近所でクマ目撃の情報が入ってから外出が怖くなった」
「子どもの通学路にクマが出たって聞いて本当に不安です」
「住宅地でクマなんて冗談だと思ってたのに現実になるとは」
「駆除は可哀想だけど人命が最優先だと思います」
「もう山奥だけの問題じゃなくなってきてる」

こうした住民の切実な声が広がる中、国と自治体は対策の実効性が問われています。

仙台市で全国初の緊急銃猟実施

2025年10月15日、仙台市太白区の住宅地近くでクマ1頭が出没し、自治体判断で市街地での銃猟を可能とする緊急銃猟制度が初めて適用されました。前日14日午後4時ごろに住民からの通報を受け、仙台市は周辺の安全を確保した上で翌朝6時前に発砲し、体長約1.4メートルのオス成獣を駆除しました。この対応で住民にけが人は出ませんでした。

緊急銃猟制度は2025年9月に改正鳥獣保護管理法が施行されたことで開始されたものです。住民の日常生活圏にクマが侵入し、危害を及ぼす恐れが大きい場合に、市町村長の判断で銃猟を委託できる仕組みです。浅尾環境相はこの仙台市の事例について適切に実施され迅速な対応が行われたと評価し、今後は他自治体に教訓を速やかに共有する方針を示しました。

指定管理鳥獣への指定で対策強化

人的被害の増加を受け、国は2024年4月にクマを指定管理鳥獣に追加しました。これは集中的かつ広域で個体数の減少などを図る必要があると判断されたためです。指定管理鳥獣に指定されると、都道府県による捕獲や調査などの事業が国の交付金の対象となり、財政支援が受けられます。ただし絶滅の恐れがある四国のツキノワグマは対象外とされています。

ニホンジカやイノシシに続く3例目の指定となったクマですが、これらの動物とは異なる支援メニューが予定されています。クマは繁殖力が弱く生息数も少ないため、過度な個体数減少につながらないよう保護の面にも配慮したバランスの取れた対策が求められています。

今後の課題と展望

クマの出没が増加している背景には、山林の餌となるドングリなどの凶作や、生息域の拡大が指摘されています。2023年度は東北地方を中心に出没件数が過去最多を記録し、特に岩手県と秋田県で全体の4割を占めました。専門家は気候変動による餌資源の不安定化や、耕作放棄地の増加による生息環境の変化を要因に挙げています。

今後は緊急銃猟制度の運用実績を積み重ねながら、電気柵の設置や追い払いなどの複合的な被害防止対策を強化する必要があります。同時に、住民への情報提供や避難行動の周知徹底も欠かせません。浅尾環境相が強調する科学的データに基づいた個体数管理と、住民の安全確保を両立させる取り組みが求められています。