2025-09-01 コメント投稿する ▼
三菱商事の撤退で不透明感増す洋上風力 漁業者が経産相に安定した事業推進を要望
三菱商事の撤退で揺れる洋上風力発電
全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は1日、経済産業省を訪れ、武藤容治経済産業相に洋上風力発電事業の着実な進展を求める要望書を提出した。背景には、三菱商事が秋田県や千葉県沖で進めていた建設計画から撤退を表明したことがある。坂本氏は、立地地域や漁業関係者に不安や混乱が広がるのを避けるため、政府が早期に方針を示すよう求めた。
面会は非公開で行われたが、坂本氏は終了後に記者団へ「漁業者は協力姿勢を持って国や事業者と調整してきた。だが今は不安が大きい。安心できる方向性を示してほしい」と強調した。武藤氏は「国のエネルギー事業が頓挫しないように前進させる」と応じ、政府として事業推進の意志を明確にした。
「協力してきた漁業者を不安にさせるのは無責任だ」
「国の再エネ計画は大丈夫なのか心配」
「電気料金がさらに上がるのではないか」
「洋上風力よりも原発再稼働のほうが現実的だ」
「結局、負担は国民に回ってくるのでは」
事業撤退の背景に高騰する建設費
三菱商事は8月27日、国内3海域での洋上風力発電計画から撤退すると発表した。その理由は、建設費用が4年前の入札時の想定から2倍以上に膨らみ、採算が確保できないためだ。ウクライナ情勢や円安、資材価格の高騰が背景にあるとされる。
当初は政府の「グリーン成長戦略」に基づき、大手商社を中心に再生可能エネルギー分野への投資が加速していた。しかし、見込みの甘さや長期的な収益性への懸念が露呈し、風力分野のリスクが顕在化した格好だ。
漁業者との共存と地域社会への影響
洋上風力は、漁場と重なるケースが多いため、事業者は漁業関係者との調整を不可欠としてきた。坂本会長も「これまで漁業者は共存の道を探ってきた。だからこそ今の事態は大きな不安要素だ」と述べる。
地域住民からは、環境への影響や景観への懸念に加え、撤退による経済的な空白を心配する声も出ている。特に秋田や千葉は再生可能エネルギーの拠点として期待が大きかっただけに、先行きの不透明さが地域の不安を増幅させている。
エネルギー政策と国民負担の課題
政府は再生可能エネルギー比率を2030年までに大幅に高める方針を掲げている。だが、建設コストの高騰や事業採算性の悪化は、国のエネルギー政策全体に影を落としている。
一部では「再生可能エネルギーへの偏重は電気料金の上昇を招き、国民生活を直撃している」との指摘もある。再生可能エネルギー促進のために導入された再エネ賦課金は、すでに国民の負担増として表面化している。加えて、今回のような大規模撤退は「結局は国民にツケが回るのでは」との不信感を呼び起こしている。
政府がエネルギー安全保障とコスト負担のバランスをどう取るかが問われる局面に来ている。原子力や火力発電との組み合わせをどう調整するか、現実的な政策判断が必要とされる。
洋上風力の将来とエネルギー政策の岐路
三菱商事の撤退は、洋上風力発電の推進に向けた大きな試練を突き付けた。今後は政府が制度設計や補助の在り方を見直し、事業者が安心して投資できる環境を整えることが不可欠となる。
同時に、国民負担をどう抑えるか、電力の安定供給をどう確保するかという課題が突き付けられている。再エネ推進の理想と現実の間で、日本のエネルギー政策は岐路に立たされている。