2025-08-26 コメント投稿する ▼
山口・長生炭鉱で遺骨発見か 183人犠牲事故、政府の消極対応に批判
山口・長生炭鉱の遺骨発見と政府対応の課題
昭和17年、山口県宇部市の海底炭鉱「長生炭鉱」で起きた水没事故では、183人の炭鉱労働者が犠牲となった。25日から始まった市民団体による潜水調査では、骨とみられるものが複数回収され、26日には頭蓋骨のようなものも確認された。山口県警が人骨かどうか鑑定を進めている。
事故では、朝鮮半島出身者136人、広島や沖縄など内地出身者47人が命を落とした。採掘基準を超えて海底に近い深さで掘削が行われていたことが原因とされている。戦後炭鉱は閉山され、政府は長らく遺骨収集に消極的な姿勢を示してきた。
市民団体が独自に進めた潜水調査
市民団体はクラウドファンディングで資金を集め、坑口を掘り起こし、水中探検家による潜水調査を実施。これにより初めて遺骨収集の道筋がついた。今回の調査で具体的な骨の発見が相次いだことは、長年置き去りにされてきた犠牲者の存在を改めて世に示した。
一方、福岡資麿厚生労働相は26日の会見で「安全を確保した上での潜水調査に資する知見は得られていない」と述べ、財政支援に慎重な姿勢を崩さなかった。国の安全確保体制が未整備であることを理由に、予算措置や積極的な関与を見送っている形だ。
遺族・関係者からの不満と批判
石破茂首相は4月の国会答弁で「必要があれば躊躇すべきでない」と現地視察に含みを持たせていたが、現時点で政府が主導的に動く気配は薄い。社民党の大椿裕子前参院議員は「市民団体に委ねるのではなく、政府が責任を持って予算を付け、調査・収容・鑑定・返還を進めるべきだ」と主張した。
特に問題視されているのは、出身地によって対応が分かれている点だ。朝鮮半島出身者については厚労省の人道調査室が窓口となっているが、日本人犠牲者の窓口は存在しない。大椿氏は「国策によって石炭増産が呼びかけられた結果の事故なのに、日本人被害者への窓口がないのはあまりにひどい」と批判した。
ネット上でも、政府対応に疑問の声が広がっている。
「市民団体が遺骨を掘り起こしているのに、国は何もしていない」
「安全性の議論だけを理由に先送りするのは無責任だ」
「朝鮮出身者も日本人も、等しく犠牲者。差をつけるのはおかしい」
「戦時中の国策が事故を招いたのだから、政府が全面に立つべきだ」
「遺骨を放置することは国際的な批判も招く」
食料・エネルギー動員の歴史と向き合うべき時
長生炭鉱事故は、戦時下の石炭増産政策の犠牲ともいえる。エネルギー確保のため無理な採掘が行われ、労働者の安全より国策が優先された結果、多数の命が失われた。今回の遺骨発見は、日本が自国の戦争遂行体制の中で生んだ犠牲と改めて向き合う契機となる。
市民団体の尽力によって一歩進んだ遺骨収集だが、今後は政府が主体的に関わらなければならない。国策事故で失われた命を弔い、遺族や地域に誠意を示すことは国家の責任である。安全確保の困難さを理由に先送りを続ける限り、国民からも国際社会からも信頼を得ることはできない。石破政権に問われているのは、犠牲者を「忘れられた存在」にしない覚悟である。