2025-08-22 コメント投稿する ▼
末期がん患者への自由診療に初の措置命令 北青山D.CLINICの遺伝子治療で手続き違反
自由診療の遺伝子治療に初の措置命令
厚生労働省と環境省は22日、東京都渋谷区の「北青山D.CLINIC」に対し、カルタヘナ法に基づく手続きを怠ったとして再発防止や製剤の廃棄報告を求める措置命令を出した。同クリニックは「CDC6shRNA治療」と称する自由診療の遺伝子治療を末期がん患者に提供していたが、組み換えウイルスの使用について事前に必要な承認を得ていなかった。自由診療を対象とした措置命令は今回が初めてとなる。
問題の治療では、特定の遺伝子を患者の細胞に導入するため、組み換えウイルスを利用していた。カルタヘナ法では、こうした遺伝子組み換え生物の利用に際しては、厚生労働大臣や環境大臣への書類提出と承認取得が義務付けられている。しかし同クリニックは2009年以降、承認を経ないまま治療を実施し、これまでに3000件以上が行われていた。
患者への影響と安全性
厚労省と環境省の調査によれば、これまでのところ治療による有害事象は確認されていない。ただし安全性の問題が表面化していないからといって、承認を無視した臨床実施が許容されるわけではない。特に遺伝子治療のように未知のリスクを含む医療技術に関しては、規制の遵守が不可欠である。
クリニック側は今年6月以降、治療を中止しており、今回の措置命令について「真摯に受け止め、報告や申請の体制を整えたい」とコメントしている。
「未承認で3000件以上はあまりに杜撰」
「患者の命を思えば法を軽視する行為は許されない」
「自由診療の名で安全管理を軽んじてはいけない」
「有害事象がないから大丈夫という考えは危険」
「国はもっと厳格に監視すべきだ」
ネット上では、規制軽視に対する強い批判が目立つ。命に直結する医療において法的手続きが軽視されたことへの不信感が広がっている。
自由診療と規制のはざま
今回の問題は、自由診療のあり方と規制の限界を浮き彫りにした。自由診療は先進的な治療や未承認の療法を患者が自己負担で受けられる制度だが、その分だけ安全性の担保は制度的に脆弱である。患者は「新しい治療を受けたい」という切実な思いから自由診療を選ぶが、その背後には十分な情報提供やリスク管理が不可欠だ。
一方で、研究や臨床の発展を阻害しない柔軟性も求められる。今回のケースは「承認手続きを省略した」という明確な法令違反であるが、同時に新しい医療と規制のバランスをどう取るかという課題を浮かび上がらせた。
今後の課題
厚労省は今後、自由診療で行われている先端医療の監視体制を強化する方針を示している。これまでのように「健康被害が確認されなければ問題なし」という消極的な姿勢ではなく、法令遵守を前提とした厳正な管理が求められる。
また、患者にとっては「自由診療だからこそ自己責任」という考えでは済まされない。医療機関は規制を順守しつつ、最新の治療を安全に提供する責務を負っている。今回の措置命令は、自由診療に潜むリスクへの警鐘として大きな意味を持つ。
北青山D.CLINICによる遺伝子治療の未承認実施は、カルタヘナ法違反として初の措置命令に至った。表面的に健康被害が出ていなくても、法令を無視した医療行為は正当化されない。今後は自由診療における規制の厳格化と情報公開が不可欠であり、患者が安心して治療を選べる環境を整えることが国に求められている。