2025-08-07 コメント投稿する ▼
労災遺族補償年金の男女差、ついに是正へ 夫だけ年齢制限の不平等に終止符か
労災遺族補償年金に残る性差 厚労省がようやく見直しへ着手
労災で家族を失った遺族が受け取る「労災遺族補償年金」において、長らく放置されてきた男女の不平等が、ようやく是正に向けて動き始めた。厚生労働省は7日、労働政策審議会の部会にて、年金の受給資格に関する性別による差異を見直すための議論を開始。有識者研究会による報告書も提示され、「男女差に合理的理由は見出し難い」として、制度の抜本的な見直しが求められている。
現行制度では、夫を亡くした妻は年齢に関係なく年金を受け取れるのに対し、妻を亡くした夫は原則55歳以上でなければ受給できない。この男女差は、1965年の制度創設時に、「妻は生計を維持できない」という時代背景に基づいて設けられたものだ。
「未亡人は保護されるけど、寡夫は放置かよ」
「家族を失った苦しみに性別なんて関係あるか?」
「共働きが当たり前の時代に、昭和の価値観を引きずりすぎ」
「55歳以上でないと悲しめないってことか?」
「逆差別の典型。すぐ改正すべきだ」
こうしたSNSでの怒りや疑問の声が続出している。
変わる家族の形に制度が追いつかず 逆差別の象徴に
現在の家族構成や就労形態は、1965年とは大きく異なる。共働きが当たり前となり、男性が家計の中心というモデルはすでに過去のもの。にもかかわらず、年金制度には「夫=稼ぎ手、妻=扶養される側」という性別による役割分担が色濃く残っている。
実際、配偶者を亡くした場合の経済的損失は、性別にかかわらず深刻だ。特に近年では、女性の高収入化も進んでおり、妻を失った夫が家計を支えられなくなる事例も増えている。にもかかわらず、制度は男性の経済的損失を過小評価していると指摘されてきた。
有識者研究会の報告書も、「現代の雇用や家庭の実情に即していない」「性別による扱いの違いに合理性がない」として、男女共通の要件とすべきと提言。厚労省はこれを踏まえ、2026年の通常国会に労災保険法の改正案を提出する方向で調整に入った。
訴訟も相次ぐ中、「違憲性」への意識も
この制度の男女差は、すでに裁判でも争点となっている。東京地裁をはじめとする複数の裁判所では、「年齢要件に男女差があるのは憲法14条に反する」として、遺族の男性らが提訴している。
憲法14条は「すべて国民は法の下に平等」と定めており、行政制度に性差を設ける場合には厳格な合理性が求められる。しかし、厚労省側はこれまで「制度の経緯」や「政策的配慮」を理由に、変更に慎重姿勢を崩さなかった。だが時代が変わり、司法の判断も無視できなくなった今、ようやく見直しが現実味を帯びてきた。
本質問われる行政の対応力 憲法順守か、惰性維持か
今回の見直しは、単なる制度改正にとどまらない。「国の制度は憲法を順守しているのか?」「行政は現実を直視しているか?」という根源的な問いが突き付けられている。性別による扱いの違いが、時代遅れな価値観や惰性で放置されてきたのであれば、それは行政の怠慢であり、明確な責任が問われる。
制度が生まれた当時の背景を理解することは必要だ。しかし、時代が変わったにもかかわらず変化を拒む理由にはならない。「男女平等」を標榜しながら、現実には不平等な制度を温存し続ける――。そんなダブルスタンダードは、今後許されるべきではない。
本件は、制度的逆差別の象徴ともいえる問題だ。厚労省は、国民に対して誠実に説明を尽くし、速やかに改正に踏み切るべきだろう。