2025-07-28 コメント投稿する ▼
介護職員の離職率が過去最低を更新 採用難が深刻化、現場の人手不足は依然継続
介護職員の離職率が過去最低に 安定化の裏で採用難が深刻化
介護労働安定センターが7月28日に発表した最新の「介護労働実態調査」により、介護職員の離職率が12.4%と過去最低を更新したことが明らかになった。前年度の13.1%から0.7ポイントの減少となり、調査方法が現在の形となった2005年度以降で最も低い水準となった。
離職率の低下は近年緩やかに続いてきたが、直近2年間でそのペースが加速している。全産業平均の15.4%(厚生労働省「2023年雇用動向調査」)を下回り、介護職の安定性が際立つ結果となった。
職場改善が奏功、定着率向上も
今回の離職率低下の背景には、介護現場での職場環境改善の努力がある。人員配置の見直しや業務分担の最適化、夜勤負担の軽減、さらにはチームケアの充実といった取り組みが、職員の働きやすさを後押しした。
また、政府が進める介護職員処遇改善加算やベースアップ加算といった支援策も、間接的に人材の定着に寄与しているとみられる。事業所ごとに賃金格差はあるものの、「離職せずに働き続けられる職場づくり」への意識が高まっているのは確かだ。
市民の声からも、現場への評価や課題意識が感じられる。
「ようやく働き続けやすい環境が整ってきたのかも」
「待遇よりも人間関係やシフトの柔軟さが離職に直結する」
「介護職に誇りを持てるようになってきたことが嬉しい」
「辞める人が減っても、新しく来てくれなきゃ現場は回らない」
「給料だけじゃない。でも他業種に流れるのは止められない」
採用は過去最低水準に 人手不足は依然深刻
一方で、離職率が下がる一方で採用状況は厳しさを増している。昨年度の介護職員採用率は14.3%と過去最低を記録。これは2021年度(15.2%)を下回る数値で、3年ぶりの低下となった。前年度(16.9%)から2.6ポイントも下がっており、離職率の低下幅(0.7ポイント)を大きく上回る。
この乖離が意味するのは、辞める人が減っても、新たに人材を確保できなければ現場は回らないということだ。採用活動を行っても応募がない、または条件が合わずに辞退されるケースが増えており、特に中小規模の施設ほどその影響は深刻とされる。
事業所間の格差も顕著 20%超の離職率も
今回の調査では、事業所や施設間での離職率のばらつきも浮き彫りとなった。離職率が10%未満の施設が53.6%と半数を超えた一方、20%を超える高離職率の施設も24.1%にのぼる。地域や施設の規模、労働条件によって格差が広がっている状況は変わっておらず、制度面だけではカバーしきれない課題も残る。
こうした格差が放置されれば、働きやすい施設に人材が集中し、その他の施設では人手不足が慢性化する「二極化」が進行する恐れがある。全国的な人材循環を視野に入れた政策設計が求められる。
賃上げの必要性と国の役割
離職率が下がったとはいえ、今後を見据えた人材の維持・確保にはさらなる施策が欠かせない。特に賃金水準において、他産業と比較して介護職は依然として低水準にある。賃上げを先行させる業界への流出を食い止めるためには、国が明確な意思をもって処遇改善に踏み切る必要がある。
介護業界の魅力を高めるためには、単なる賃金の引き上げだけでなく、教育支援、キャリアパス構築、負担の軽減策など、総合的な支援策が不可欠だ。政府は2024年度以降の介護報酬改定や働き方改革と並行して、より戦略的な人材政策に踏み出さなければならない。
今回の調査結果は、介護現場の安定化が一歩進んだことを示しながらも、採用難という新たな課題の深刻さを浮き彫りにした。人材がいなければ制度は機能せず、介護の未来も描けない。数字の好転に安心せず、現場に寄り添った対策の継続が求められる。