2025-07-24 コメント投稿する ▼
介護保険制度を地域軸で柔軟化 厚労省が「訪問+通所」組み合わせ案を報告書で提示
地域で選べる介護へ 厚労省が「訪問+通所」柔軟化に舵 2040年に向け報告書
厚生労働省は24日、2040年の高齢化ピークを見据えた介護保険制度の見直しについて、地域の実情に応じた「弾力的運用」を進める方針を盛り込んだ報告書を公表した。高齢化や人口減少が地域ごとに大きく異なる現実を踏まえ、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市」の3分類に分けて、それぞれに最適な介護体制を整備するという戦略的なアプローチだ。
特に注目されたのは、訪問介護と通所介護(デイサービス)を柔軟に組み合わせて提供できる仕組みの導入である。これまで制度上は個別に分かれていたサービスを、一体として捉え直すことで、地域の実情に応じた持続可能な介護提供体制を築くことを目指す。
中山間地域は“柔軟さ”が鍵 人員基準の見直しも
報告書では、特に中山間地や過疎地域において、現在の基準ではサービスの維持が困難になると指摘。具体的には、人員配置基準の柔軟化や、訪問介護と通所介護の一体運用、地域密着型の評価制度の導入などを検討課題として挙げた。
これは、限られた人材と資源を有効に活用するための現実的な措置であり、従来の画一的な制度設計からの脱却を意味する。
「人も金も足りない地域では、柔軟な運用しかない」
「訪問とデイの両方受けられるのはありがたい」
「制度が変わっても質は落とさないで」
「基準を緩めるだけなら“質の後退”にならないか心配」
「過疎地で暮らす高齢者の選択肢が増えるなら前向きに評価」
市民・有権者の声にも、制度の合理化と生活の実利を両立させることへの期待と不安が入り混じっている。
大都市部は“老老世帯”と認知症に備えたモデルを
一方、都市部では異なる課題が浮き彫りになっている。急速に進む高齢化の中で、1人暮らし高齢者や認知症患者、“老老介護世帯”が増加。報告書では、こうした現実に対応するため、24時間365日の対応を基本に据えたサービス体制の整備が必要だと強調された。
ここでも、「訪問+通所」型の包括的サービスの検討が挙げられた。都市部の利用者は、多様なニーズを抱えており、突発的な支援要請や緊急対応が求められる場面が少なくない。従来の“決まった時間・場所”というサービス枠組みを超える柔軟性が問われている。
制度改革の行方は2027年度へ 報酬改定が焦点
今回の報告書は、あくまで中長期の方針を示すものであり、制度改正・報酬改定の実施は2027年度が目標とされている。厚労省・老健局の黒田秀郎局長は、「審議会に報告したうえで、より具体的な制度設計に進んでいく」と述べ、報告書の内容が今後の政策議論の土台になることを示唆した。
特に、介護報酬の体系を地域軸でどう変えていくか、訪問と通所の一体提供にどこまで報酬上の評価を設けるかなど、実務的な制度設計が注目される。高齢者人口が急増する2040年を目前に控え、国と自治体、事業者、利用者の信頼をどう築いていくかが問われている。
量から質・柔軟性へ 介護保険の「次の一手」
これまでの介護保険制度は、全国一律のルールと報酬で設計されてきた。しかし、人口構造や人材の確保状況が地域によって大きく異なる中、「同じ制度をどこでも均等に適用する」こと自体が限界を迎えている。
今回の報告書が示した方向性は、まさに「制度の地域化・柔軟化」に向けた転換点である。全国画一から地域最適へ。利用者の暮らしを中心に据えたサービス設計が実現できるのか、2027年度の制度改正はその試金石となるだろう。