2025-06-30 コメント投稿する ▼
ケアプラン連携システム、介護情報基盤と統合へ 厚労省が負担軽減と効率化狙う
厚労省、ケアプラン連携システムを「介護情報基盤」と統合へ 現場からは無料化継続を求める声
紙とFAXの時代に終止符 介護情報DXが本格化
6月30日、厚生労働省は社会保障審議会・介護保険部会において、既存の「ケアプランデータ連携システム」を、2025年度以降に順次稼働予定の「介護情報基盤」と統合する方針を正式に提示し、委員から大筋で了承を得た。
ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所と他の介護サービス事業所が、利用者のケアプランや利用票をやり取りするために整備された仕組みだ。従来の紙やFAXに代わり、安全かつ効率的なオンライン共有が可能になると期待されていたが、導入率は今年5月時点でわずか7.2%にとどまっていた。
今回、厚労省が構築を進める「介護情報基盤」は、介護事業所や自治体、医療機関、そして利用者自身が、それぞれ必要な情報を安全に引き出せる新たな情報インフラである。目的は、介護現場の煩雑な事務作業の軽減、迅速な情報共有、そしてサービスの質向上だ。
「紙やFAXに戻らない世界を本気で目指してほしい」
「DXというならまず現場が“楽になる”実感を出して」
こうした現場の声を受け、厚労省は両システムを統合することで、煩雑な二重運用を解消し、現場の業務負担とコストを一挙に削減する狙いだ。
統合の先に広がる“スマート介護”の可能性
両システムを統合することで、利用者情報やケアプランが一元管理され、施設間や医療機関との連携が格段に円滑になる。たとえば、訪問介護事業所と通所施設の間で生じがちな情報の行き違いが減り、ケアの質そのものが高まる。
「介護情報基盤」の運用は来年度以降、準備が整った市町村から順次開始され、2028年4月1日までには全国全市町村での導入を完了させる見通しとなっている。
厚労省の担当者は、「システムが分かれていることで運用保守にも二重のコストがかかっていた。統合でランニングコストも抑制できる」と話しており、国としても財政効率を重視した構造改革の一環と位置づけている。
導入加速の鍵は“無料化”にあり?
ただし、導入率の低さには理由がある。利用には事業所側の負担が生じることが多く、中小規模の施設では導入に慎重な姿勢も根強い。
6月から1年間に限り無料キャンペーンが実施されているが、審議会ではこの期間の延長、さらには恒久的な無料化を求める声が相次いだ。
日本介護支援専門員協会の小林広美副会長は、「介護情報基盤と統合されるまで、少なくとも無料であるべき。その後も無料を原則とすべき」と訴えた。また、民間介護事業推進委員会の山際淳代表委員も、「中小事業所にとっては導入費が重い。無料化は不可欠」と強調した。
「DXって言ってるのにお金がかかるの、矛盾してない?」
「まずは導入してもらうことが大事でしょ。無料は当然」
「紙代の方が安いなら誰も使わないよ」
この要望に対し、厚労省の関係者は「今日の委員意見を踏まえ、財政当局としっかり議論していく」と述べ、制度設計の最終判断は今後に委ねられる見通しとなっている。
介護のデジタル化、乗り遅れれば“現場崩壊”も
高齢化と人材不足が同時進行するなか、介護現場では「質を落とさず、時間を減らす」ことが求められている。ケアプランデータの共有や電子記録の連携は、その解決策として期待されているが、実際に現場に浸透させるには、制度設計だけでなく“使いたくなる”設計が必要だ。
今後は、情報基盤と現場のシステムがどうスムーズに接続されるか、ICTリテラシーが低い現場職員への研修支援、そして民間ベンダーとの協働体制など、課題は山積している。
国として“システムを作る”だけで満足せず、“現場が使い続けられる”設計に持ち込めるかどうかが、介護の未来を左右する。