2025-06-30 コメント投稿する ▼
要介護認定、申請代行の対象拡大へ 主治医意見書の事前取得も正式容認へ
要介護認定申請の“壁”が一つ緩和へ 厚労省が代行対象拡大と主治医意見書の事前取得を明確化
申請代行の“対象外”に風穴 介護施設への新たな選択肢
介護保険制度の中核である「要介護認定」の申請をめぐり、厚生労働省が規制緩和に踏み切る方針を固めた。6月30日に開かれた社会保障審議会・介護保険部会において、要介護認定の申請を代行できる事業所・施設の対象拡大案を提示し、多くの委員から賛同を得た。
これまで、要介護認定の申請代行は「居宅介護支援事業所」「介護保険3施設(特養・老健・介護医療院)」「地域密着型特養」「地域包括支援センター」に限られていた。しかし今回の見直しでは、介護付き有料老人ホーム、地域密着型の介護付きホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護(いわゆる“複合型サービス”)も代行対象に追加される見通しだ。
これらの施設にはすでにケアマネジャーが常駐しており、実務的には申請支援の体制が整っていた。だが現行制度上は「代行不可」とされており、入居者本人や家族が市区町村の窓口に直接出向かなければならないケースもあった。
こうした実態に対し、ある施設関係者はこう語る。
「入居者は高齢で移動もままならない。家族も遠方在住が多く、申請手続きだけで疲弊する」
代行対象の拡大によって、現場に即した柔軟な対応が可能となり、申請のハードルが下がることが期待される。
主治医意見書の“申請前取得”も正式に容認へ
同じ審議会では、要介護認定に必要な「主治医意見書」について、申請前に本人が入手しても差し支えないことをルール上明確にする案も示され、大筋で了承された。
現行の多くの自治体では、申請を受けた後に市町村が主治医へ意見書を依頼する運用となっている。しかし法令上、申請者が自ら主治医から意見書をもらうことは禁じられておらず、すでに一部の自治体ではこの運用を採用している。
厚労省はこの“制度と実務の乖離”を是正すべく、通知や通達の形で「事前取得も可能な選択肢である」と明文化する方向だ。これにより、申請に必要な準備が迅速に進み、認定までの時間短縮にもつながると見込んでいる。
申請手続きを経験した市民からは、こうした制度見直しに一定の評価の声も上がる。
「申請から認定までに何週間もかかってた。これで少しは早くなる?」
「意見書をすぐもらえるなら、認定待ちで介護サービスが止まる心配も減る」
「“制度的にはOKだけど自治体でダメ”って曖昧さがいちばん困るんだよ」
ただし、主治医意見書の事前取得は「申請の前提条件」とはされず、あくまで選択肢の一つとして示される。各自治体の運用方針や医師側の負担なども踏まえ、実情に応じた調整が求められる。
改革の背景に“高齢化社会の現実”
今回の制度見直しは、昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に基づくもので、高齢化の進展により多様化・複雑化する介護ニーズに対応するための一環と位置づけられている。
厚労省の担当者も、「今後の制度改正に向けて、法改正も視野に入れて議論を深める必要がある」と発言しており、単なる運用レベルの変更にとどまらず、根本的な制度設計の見直しにも踏み込む可能性が出てきた。
特に、在宅介護から施設介護への移行期における申請の煩雑さや、地域間格差、手続きの不透明さは長年の課題とされてきた。今回のような制度の“ほころび”を埋める動きは、現場の負担軽減と利用者本位の制度設計へ向けた小さな一歩といえる。
制度はあるのに使えない?現場の声が制度を動かす
要介護認定は、介護サービスの利用に欠かせない“入り口”だ。しかしそのプロセスが複雑すぎる、遅すぎる、分かりづらすぎるという不満は、家族や本人、現場スタッフからも長年噴出してきた。
今回の規制緩和により、「制度はあるのに実際には使えない」状態から、「制度が使えるように見直す」方向に一歩踏み出した形だ。
今後の課題は、制度変更を“知っている人だけが得をする”状態にしないことだ。高齢者やその家族、現場の職員にわかりやすく伝える広報や支援体制が求められる。
「制度が変わったって、知らなきゃ意味ない」
「通知とか紙で来ても高齢者には難しいよ」
「ケアマネだけじゃなく市町村職員もちゃんと研修して」
高齢化と人手不足が進行するなか、制度そのものを柔軟にし、現場に寄り添う行政対応が求められている。