2025-06-23 コメント投稿する ▼
厚労省が社会福祉法人の運営ルール見直しへ 施設転用・貸付の規制緩和で地域福祉維持を狙う
厚労省が社会福祉法人の運営規制を見直しへ 施設転用や貸付の弾力化で地域福祉維持を図る
厚生労働省は、将来的な高齢化の進行と人口減少に対応するため、社会福祉法人に対する運営ルールの大幅な見直しに踏み切る方針を示した。6月23日に開かれた有識者による検討会では、2040年を見据えた介護や障害福祉、保育といった分野横断的な福祉体制の在り方が議論され、その中で施設の所有義務や転用・貸付規制の緩和を含む方針が打ち出された。
これまで、社会福祉法人は国からの補助金を受けた施設を10年未満で転用・貸付する場合には原則として補助金を返還する義務を負っており、地域のニーズや状況の変化に即応する柔軟な運営は難しかった。特に人材不足と過疎化が進む中山間地域では、施設の再配置や用途変更すらままならず、住民サービスの維持に深刻な影響を与えていた。
今回のルール見直しは、そうした現場の声と制度のミスマッチに対応するものだ。
「所有ありき」の制約を解き放ち、柔軟な運営へ
現行制度では、社会福祉法人が事業を展開するには、施設の土地・建物を原則として自ら所有する必要がある。これは、国からの補助金が不正に転用されるリスクを抑える意図があるものの、結果として資本力の乏しい法人や新規参入者には過度な参入障壁となってきた。
厚労省はこうした状況を打開し、既存施設を地域内で柔軟に再活用したり、複数の法人や行政が連携してサービスを展開できるような仕組みに変えることで、「福祉サービスの持続性」を高めたい考えだ。
例えば、ある地域で介護施設の利用者が減少している一方で、障害者支援や保育のニーズが高まっている場合、これまでであれば新たな施設整備や補助金申請が必要だったが、今後は既存の施設を転用して迅速に対応できるようになる可能性がある。
「正直、10年縛りは無意味だった。現場の柔軟性をもっと信じてほしい」
「空き施設があっても使えないのは本末転倒。ようやく一歩前進」
「福祉を続ける条件で転用OKにすべき。杓子定規な返還ルールは時代遅れ」
「小さな法人は土地買えない。持ちたくても持てない。規制緩和は歓迎」
「これが『サービスの受け手本位』ということ。ようやく省庁も気づいたか」
ネット上にはこうした歓迎の声が多く寄せられた一方、補助金の使途や施設転用の透明性をどう確保するかという論点も残されている。
分野横断で資源を再配置 限界地域に新たな希望
厚労省は今回の議論を「分野横断的な再設計」の一環として位置づけており、介護・障害福祉・保育など異なる分野の施設・人材・財源を、地域の実情に応じて柔軟に再配置する方向性を打ち出している。
その中には、将来的に施設の機能変更を前提とした計画的統廃合や、民間事業者や自治体による運営委託の拡大も含まれている。これにより、中山間地域や過疎地でも必要なサービスを維持できる体制を構築することが目的だ。
厚労省は今後、2027年度に予定されている介護保険制度などの次期制度改正に向けて、地域自治体や法人関係者と協議を進め、最終報告書を今夏にとりまとめる方針だ。各種審議会での本格的な制度設計につなげ、全国的な制度改正を視野に入れる。
制度疲労の放置こそ「行政の不作為」
人口構造が変わっているにもかかわらず、制度が硬直化しているのは「行政の不作為」そのものである。高齢化社会に適応するには、既存制度にしがみつくのではなく、状況に応じた機動的な制度運営が不可欠だ。
しかし現実には、補助金の返納ルールや所有義務など、制度設計が過剰に「性悪説」に立脚し、現場の裁量を奪ってきた。結果、使える施設も活かされず、人材も集まらず、地域福祉は疲弊した。
今求められているのは、「予算ありき」や「施設ありき」ではなく、住民の生活と尊厳を最優先にした政策判断である。その意味で、今回の厚労省の見直し方針は一歩前進と評価できる。
ただし、改革は道半ばであり、制度設計にあたっては「補助金の適正利用」と「現場の実情」をどう両立させるかが試される。行政が信用されるのは、ルールを厳しくするからではなく、柔軟かつ誠実な対応を積み重ねていくからだ。