2025-06-13 コメント投稿する ▼
厚労省が特養向け「急変時対応手引き」公表 年1回の見直し義務化と現場の課題とは
厚労省が特養向け「急変時対応手引き」公表 年1回の体制見直しで“命の現場”に新ルール
厚生労働省は6月13日、特別養護老人ホーム(特養)における入所者の急変時対応について、現場での体制整備や見直しのための「手引き」を初めて公表した。2024年度の介護報酬改定に基づき、特養に“医療的判断を伴う対応”を求める制度的枠組みが強化される中、現場が混乱しないようガイドラインとして示した形だ。
高齢化が進み、特養は「医療と介護のはざま」で揺れる現場の最前線となっている。医師が常駐していない施設で、入所者の急変時にどう判断し、どう動くか――。この「年1回以上の体制見直し」の義務化が何を意味し、どう進められるのか、現場と家族、そして制度側の論点が交錯する。
2027年度から義務化へ 急変時対応に求められる“平時の備え”
今回の手引きの背景にあるのは、2024年度介護報酬改定で打ち出された「医療との連携強化」だ。特養ではこれまで、緊急時対応が職員個人の判断に委ねられる場面が少なくなかった。高齢入所者の容体急変時、救急搬送のタイミングや家族への連絡、対応範囲の判断が現場のストレスやトラブルの火種となることも多かった。
そこで厚労省は、すべての特養に対して次の2点を制度化した:
* 一定の要件を満たす「協力医療機関」との連携の明確化
* 対応マニュアル(検討・見直しを含む)を年1回以上実施する体制の構築
なお、義務化には3年間の経過措置が設けられており、本格適用は2027年度からとなっている。これは、地方や医療機関が限られる地域での対応難を考慮したもので、今後の準備期間をどう過ごすかがカギとなる。
「医師がいない現場で、急変時の判断を“施設責任”にされても…」
「制度として整えるのは必要。でも現場の人手が先に限界」
「年1回の見直しって、形だけになりそう」
「現実の夜勤1人勤務で、手引きどおり動けるか?」
「“協力医療機関”が見つからない地方施設も多い」
手引きの構成は4章+資料編 現場職員の即応性を意識
公表された手引きは、実際の現場職員が読みやすいよう、章立てで段階的に構成されている。特に注目されているのは、第2章と第3章だ。
第2章
体制づくりの実務。施設内の役割分担、家族の意向確認、医療機関との事前連携、搬送判断の基準など、施設マネジメントの視点から整理。
第3章
実際の急変時を想定した「行動フロー」をアルゴリズム形式で記載。迷いがちな判断に対して、段階ごとに「すべきこと」が可視化されている。
このほか、第4章では医療機関との連携に不可欠な「情報提供書」の様式例が紹介され、平時の書式整備が急変時の連携力を左右することが示唆されている。
「第3章のアルゴリズム、もっと早く欲しかった」
「マニュアル頼りにならない現場だけど、あると安心」
「情報提供書の雛形、これで医師との連携が楽になる」
「制度と現場が分断していたところに、ようやく橋がかかる」
「命を扱う現場に“言語化された判断基準”ができるのは大きい」
現場と制度の“温度差”どう埋める 年1回のPDCAは可能か?
制度としては「体制見直しを年1回以上行う」ことが求められているが、問題はそれをどう実行に移すかである。中には「職員の負担がさらに増すだけ」「見直しだけして終わりになりそう」との懸念もある。
一方で、急変時の混乱を防ぐには訓練や事例共有が不可欠であり、年1回の見直しは“実践的なPDCAサイクル”の出発点にもなりうる。厚労省は今回の手引きについて、「画一的な対応を強いるものではなく、施設ごとの状況に応じた柔軟な運用を想定している」としている。
しかし現場の職員からは「制度を整えるより先に、人と時間を増やしてほしい」といった“本音”も相次いでいる。
「マニュアル見直しの時間が取れないのが現実」
「責任だけは重くなる。人員加配がなければ破綻する」
「形式だけの見直しにしたくない。だからこそ余裕が必要」
「職員の経験と判断を“仕組み化”するのは良い方向」
「やるべきことはわかる。でも担う人がいない」
命を支える「共通言語」づくりが始まる 評価されるべき一歩
今回の手引きは、制度として現場の「命の判断」を可視化しようとする取り組みとしては、極めて実務的な意味を持つ。「現場まかせ」「個人責任」の空気が強かった特養の緊急対応に、組織的判断と連携を持ち込むことで、将来的には事故や誤判断の抑止にもつながるだろう。
制度の義務化は2027年度からとはいえ、現場に与える影響はすでに始まっている。この動きを“重荷”とするか、“命を守る備え”とするか。求められるのは、机上の理論にとどまらない、実効性ある支援体制と柔軟な現場運用だ。