2025-06-11 コメント投稿する ▼
厚労省、臓器移植の院内対応を強化へ 認定コーディネーター制度で家族支援の質向上目指す
臓器移植の現場に変化 院内コーディネーターに認定制度導入へ
厚生労働省は6月11日、脳死後の臓器移植に関わる体制強化を目指し、移植コーディネーターに対する認定制度を新たに導入する方針を発表した。これにより、これまで主に日本臓器移植ネットワーク(以下、移植ネット)の専門職が担ってきた家族対応業務を、提供施設内に所属する「院内コーディネーター」が一定条件下で担えるようになる。
臓器提供の場面では、脳死判定後すぐに、家族への丁寧な説明や意思確認、医療チームとの連携などが求められる。今回の制度改正は、移植ネットに集中していた業務負担を分散させ、スムーズかつ円滑な対応を可能にする狙いがある。
移植医療の鍵を握る“院内コーディネーター”とは
院内コーディネーターとは、提供施設の看護師など医療従事者が兼務する形で配置されており、全国におよそ3,000人が活動している。これまで彼らは、主に医療現場内での事務的・技術的な支援に留まり、家族への説明や提供意思の確認などの高度なコミュニケーション業務は、外部から派遣される移植ネットのコーディネーターが主に担当してきた。
しかし、脳死判定の現場は一刻を争う。関係者が迅速かつ的確に連携し、患者家族が冷静に判断できるように支援する体制づくりは、移植医療の質と量を高める上で不可欠である。今回の認定制度では、院内コーディネーターに対し、家族の意思決定支援に必要なコミュニケーションスキルや倫理的知識などを備えるための専門研修が義務付けられ、模擬面談やロールプレイも含まれるという。
第三者性の担保も課題に対応
もちろん、院内コーディネーターが家族への説明や同意取得に直接関わることで、医療機関側のバイアスがかかる可能性も指摘されてきた。この点に関し、厚労省は「第三者性の確保」を制度の中核に据える構えを見せている。認定された院内コーディネーターが業務にあたる際には、必ず移植ネット側の別のコーディネーターも加わることを前提とし、圧力的な同意取得や不適切な対応が起きないように運用される方針だ。
つまり、認定制度とはいえ「現場主導の単独対応」とはならず、引き続き外部との連携を前提とした仕組みとして整備される。厚労省は早ければ本年度内の運用開始を見込んでおり、速やかな人材育成と指針の周知が急がれる。
制度導入の先にある課題と期待
臓器移植件数の停滞は長年にわたり課題とされており、日本の脳死移植件数は欧米諸国と比べて依然として少ない。今回の制度改革は、人的資源の有効活用を通じて、提供件数の底上げにつなげる試みである一方で、制度だけでは乗り越えられないハードルもある。
例えば、ドナー家族が最終的に提供に同意するためには、医学的説明だけでなく、深い心理的配慮と信頼関係が欠かせない。また、日本社会に根強く残る「脳死は死ではない」とする価値観への理解も必要であり、社会全体として移植医療への理解促進が求められる。
一部ネットユーザーからも賛否が分かれている。
コーディネーターの増強自体は良いけど、現場でプレッシャーかけないでね。
これって医療崩壊してる証拠じゃない?本来の医療の役割からズレてないか。
臓器移植を進めるために制度整えるのは当然。むしろ遅すぎるくらい。
第三者性とか建前じゃなく、本当に守れるのか不安。
担当する看護師さんのメンタルが心配になるよ。負担で辞めちゃう人も出そう。
今回の制度見直しは、ただ制度を“設ける”ことが目的ではない。移植という極めて繊細で重みのある医療行為を、多くの人が安心して受け入れられるよう、現場と社会がどれだけ寄り添えるかが問われている。