2025-10-30 コメント投稿する ▼
厚生労働省、職員の上司暴行事件で減給10分の1(3カ月)の懲戒処分を実施
事件は2025年3月に発生していたもので、職員が「処遇に不満があった」という理由で同課の上司の顔を殴り、左側頭部打撲などのけがを負わせたとされています。 今回の減給処分は、「減給10分の1(3カ月)」 という形式で実施されました。
公務の場で暴力事件、厚労省職員に減給処分
厚生労働省は2025年10月30日、同省健康・生活衛生局の30代一般職員が上司に対して暴力を振るったとして、減給10分の1(3カ月)の懲戒処分 を実施したと発表しました。官庁内での職場暴力事件は、公務員の信頼性に直結する深刻な事態です。事件は2025年3月に発生していたもので、職員が「処遇に不満があった」という理由で同課の上司の顔を殴り、左側頭部打撲などのけがを負わせたとされています。
同省によれば、事件は2025年3月25日午後4時ごろ、東京都千代田区にある厚労省庁舎内の執務室外廊下で起きました。職員は聞き取り調査に対して、「処遇に不満があった」 などと述べており、単なる感情的な対立による衝動的な暴力行為の側面が強いと考えられます。上司は左側頭部打撲を負い、医学的治療を要する外傷を被りました。
国家公務員の懲戒処分システム
今回の減給処分は、「減給10分の1(3カ月)」 という形式で実施されました。国家公務員の懲戒処分は、人事院規則に基づいて運用されており、減給については「1年以下の期間、俸給の月額の5分の1以下に相当する額を給与から減ずる」と規定されています。つまり、国家公務員の減給上限は月給の20%であり、最長1年間適用可能です。
今回の「10分の1」という減給幅は、月給の10%に相当し、国家公務員として許可される上限の5分の1(20%)以下に収まっています。3カ月間の継続適用という形式から、厚労省は暴力行為の悪質性は認めつつも、初犯かつけがの程度が比較的軽微である点 を考慮したと考えられます。
公務員の懲戒処分には、重い順に「免職」「停職」「減給」「戒告」の4つの種類があります。減給処分は戒告よりも重く、停職よりも軽い中程度の懲戒です。職場内暴力で傷害が発生した場合、人事院の指針では「停職又は減給」と規定されており、今回の処分はこの指針に沿ったものと言えます。
職場内暴力が問われる背景
職場内での暴力行為は、刑法上の暴行罪(刑法208条)や傷害罪(204条)に該当する可能性があります。同時に、公務員としての服務規律違反にも問われます。厚労省を含む官庁では、「全体の奉仕者」としての公務員の立場から、より厳格な規律が求められるのです。
職員が「処遇に不満があった」という理由は、多くの職場で不満やストレスが昇進、給与、配置転換などの処遇に関連していることを示唆 しています。公務員の世界では、給与体系が法律や条例で厳格に定められており、個々の裁量の余地は限定的です。にもかかわらず、職員が処遇に不満を抱いた背景には、職場内のコミュニケーション不足や職員の心理社会的支援体制の課題がある可能性も考えられます。
職場環境と暴力防止の課題
官庁を含む公務職場では、近年、ハラスメント防止や職場のメンタルヘルス対策が強化されています。厚労省自身、労働基準や職場環境改善の政策立案を担う省庁であるだけに、その内部での職場暴力発生は制度と現実のギャップを露呈させる ものとなっています。
処遇への不満から暴力に至るプロセスは、事前の相談体制の不十分さや、上司との良好な関係構築の失敗を示唆しています。また、暴力に至る前の段階で、人事管理部門や労務部門による早期介入があれば、事態を防げた可能性もあります。
今後への影響と職場信頼の回復
減給処分を受けた職員は、3カ月間にわたって給与の10%が減額されます。経済的影響に加え、公務員としてのキャリア形成にも少なからず影響を与えることになります。懲戒処分記録は人事評価に反映され、昇進の際の考慮対象となるためです。
同時に、被害に遭った上司のケアや職場全体の信頼回復も重要な課題です。職場内での暴力事件は、目撃した同僚たちにも心理的な影響を与え、職場の安全性に対する不安をもたらします。厚労省は、このような事態を受け、職場環境の改善や職員のメンタルヘルス対策のさらなる充実が求められます。