2025-09-11 コメント投稿する ▼
ケアプランデータ連携システム導入率9.8% 無料キャンペーン後の課題と普及の行方
厚生労働省は11日、介護事業所間でケアプランを共有できる「ケアプランデータ連携システム」の導入率が8月末時点で9.8%にとどまっていると公表した。 しかし、キャンペーン終了後の料金体系は未定であり、厚労省は「鋭意検討中」とするにとどまっている。 厚労省は「介護情報基盤」と呼ばれる統合的なシステムの整備を進めており、将来的にはケアプラン連携システムとの統合も計画されている。
ケアプランデータ連携システムの導入状況
厚生労働省は11日、介護事業所間でケアプランを共有できる「ケアプランデータ連携システム」の導入率が8月末時点で9.8%にとどまっていると公表した。対象となる事業所は全国に約28万7千カ所存在し、そのうち導入済みは2万8191カ所にとどまる。5月末の7.2%からは上昇したものの、依然として普及は限定的であり、厚労省の掲げる「介護現場の事務負担軽減」には道半ばの現実が突きつけられている。
このシステムはケアマネジャーやサービス事業者が紙やFAXでやり取りしていたプランをオンラインで共有できる仕組みである。導入により重複入力の削減や情報の即時共有が可能になり、業務効率化が期待されている。しかし、システムの導入には初期設定や利用料の負担、現場のITリテラシーの差などの課題も残されている。
「現場の職員はパソコンが苦手な人も多く、導入が進みにくい」
「無料キャンペーンが終わった後に利用料が高くならないか不安」
「国が推進するならば、長期的な費用負担も支援してほしい」
「FAX文化が根強く残っており、意識改革が必要だ」
「導入してみたが、相手の事業所が使っていないと意味がない」
無料キャンペーンでの導入加速
厚労省は6月から一定期間、利用料を無料にするキャンペーンを実施した。これにより導入率はわずか3カ月で2.6ポイント上昇した。介護事業所にとってコスト負担は大きな障壁であるため、無料化は普及拡大の契機となった。しかし、キャンペーン終了後の料金体系は未定であり、厚労省は「鋭意検討中」とするにとどまっている。
事業所の経営は人件費や光熱費の高騰で圧迫されており、新たな費用負担が重荷になることは必至だ。国の補助策がなければ普及のペースが再び鈍化する可能性がある。制度の安定的な利用には、料金設定の透明性と長期的な費用負担軽減策が不可欠だと指摘されている。
他国との比較と日本の課題
海外では介護・福祉分野におけるデジタル基盤整備が進んでいる。欧州諸国では電子カルテやケアプランのデジタル連携が義務化されている事例もあり、国全体での統一システム導入が定着している。日本の場合、介護事業者の規模が小規模で分散しているため、IT投資に慎重な傾向が強い。
また、個人情報保護やセキュリティへの懸念も根強い。特に高齢者のプライバシーに関わるデータを扱うため、厳格な管理体制が求められる。厚労省は「介護情報基盤」と呼ばれる統合的なシステムの整備を進めており、将来的にはケアプラン連携システムとの統合も計画されている。しかし、その道筋はまだ明確ではない。
今後の展望と普及への課題
厚労省は今後、介護現場の人手不足に対応するため、デジタル化を推進するとしている。だが現場では「システムを入れても人員が不足しては効果が薄い」という指摘も多い。効率化と同時に人材確保策を進めなければ、本来の目的であるケアの質向上にはつながらないとの声が上がっている。
一方で、利用者家族にとってもケアプランの透明化は大きな意義を持つ。複数事業所が同一情報を共有できることで、サービスの重複や漏れを防ぎ、より質の高い介護サービスを提供できる可能性がある。
政府としては、無料キャンペーン後の利用料を巡る不透明さを早期に解消し、安定的な利用環境を示すことが急務だ。導入率が1割に満たない現状は、普及に向けた政策対応が十分でないことを浮き彫りにしている。厚労省が掲げる介護デジタル化の青写真を現実のものとするには、料金、教育、サポート体制の三位一体での取り組みが求められている。
ケアプランデータ連携システム普及の現状と今後の課題
今回の数字は、介護現場におけるデジタル化の進展がまだ限定的であることを示す。厚労省の政策意図と現場の事情との間には依然として溝が存在しており、それを埋める施策が問われている。無料キャンペーンという一時的な施策ではなく、持続可能な制度設計がなければ、真の普及は難しい。介護現場の事務負担軽減とサービスの質向上を実現するには、導入事業所だけでなく、全国的な利用環境の整備が不可欠である。