2025-09-08 コメント投稿する ▼
厚労省、過疎地の訪問介護に包括報酬導入へ 選択制で事業継続と利用者保護を両立
対象となる地域では、利用者の数が減少しているうえ、移動距離が長い、季節による繁閑差が大きい、急なキャンセルが多いなど、事業運営を安定させることが難しい。 現在の出来高報酬は、サービス提供の回数や時間に応じて報酬が決まる仕組みであり、提供した分だけ収入が得られるため事業者の納得感が高い。
過疎地訪問介護に新たな報酬制度案
厚生労働省は8日、社会保障審議会・介護保険部会で、2027年度に予定される介護保険制度改正に向けて、中山間地や人口減少地域に限定した新たな訪問介護報酬制度を提案した。事業所が「出来高報酬」か「包括報酬(定額制)」を選択できる仕組みを導入し、地域での体制維持を後押しする狙いだ。
対象となる地域では、利用者の数が減少しているうえ、移動距離が長い、季節による繁閑差が大きい、急なキャンセルが多いなど、事業運営を安定させることが難しい。厚労省はこうした現状を「サービス基盤の維持が大きな課題」と指摘し、制度改革の必要性を強調した。
「介護の担い手を守るために必要な仕組みだと思う」
「過疎地での安定経営がなければ介護難民が増える」
「包括報酬は安心につながるが、サービス低下が心配」
「選択制なら地域の実情に合わせられるのでは」
「制度だけでなく人材確保策も同時に進めてほしい」
出来高報酬のメリットと課題
現在の出来高報酬は、サービス提供の回数や時間に応じて報酬が決まる仕組みであり、提供した分だけ収入が得られるため事業者の納得感が高い。一方、利用頻度が低い高齢者にとっては費用負担が少なく済む点も評価されてきた。
しかし、利用者数が限られる過疎地域では、収入が不安定になりやすい。特に長距離の移動や急なキャンセルがあると、その日の収入が大きく減るリスクがあり、持続可能な経営を阻害してきた。
包括報酬導入の狙いと懸念
厚労省が検討する包括報酬は、月単位で一定額を事業所に支払う仕組みだ。利用者数や契約内容に応じて定額収入が見込めるため、経営の予見性が高まり、訪問回数が少ない利用者も受け入れやすくなる。これにより、地域のサービス基盤を維持しやすくなると期待されている。
ただし会合では、利用者側の不利益を懸念する声も上がった。「1回当たりの料金が高くなる場合がある」「訪問回数が減り、十分なサービスが保証されないのでは」といった意見だ。厚労省は「利用者保護を損なわない制度設計を進める」として、調整を続ける方針を示した。
今後の議論と地域介護の行方
厚労省は包括報酬の導入をあくまで中山間・人口減少地域に限定する考えで、都市部の介護サービスには従来通り出来高報酬を適用する。今後は、どの地域を対象とするのか、報酬水準をどう設定するのか、訪問回数やサービスの質をどう確保するのか、といった具体的制度設計が焦点となる。
介護現場では人材不足が深刻化しており、制度改革が介護人材の確保や処遇改善につながるかも注目される。過疎地に住む高齢者にとって、安定した訪問介護の提供は生活の根幹を支える要素であり、制度の行方は地域社会全体に直結する。
訪問介護の包括報酬導入、地域医療・福祉を守る試金石に
厚労省の提案は、過疎地における介護サービスを持続させるための大きな挑戦だ。出来高報酬と包括報酬の「選択制」を設けることで、地域ごとの実情に柔軟に対応できる可能性がある。今後の制度設計次第で、高齢化が進む地方社会を守る持続的なモデルとなるか、それとも利用者負担やサービス低下を招くか、その成否が問われている。