2025-07-22 コメント投稿する ▼
参政党の教育勅語尊重に文科相が牽制 「憲法に反する使用は許されない」と明言
参政党の主張に政府が反応 教育勅語をめぐる立場表明
7月20日に投開票された参議院選挙で議席を伸ばした参政党が、教育方針の中で「教育勅語の尊重」を掲げていることに対し、阿部俊子文部科学大臣は22日、「憲法や教育基本法に反する形で教育勅語を用いることは許されない」と明確に牽制した。閣議後の記者会見で発言したもので、政権としての一線を改めて示した形だ。
参政党は自党の憲法草案の中で「教育勅語など歴代の詔勅は教育において尊重しなければならない」と明記。こうした姿勢が保守層や一部教育関係者から支持を集め、今回の参院選での躍進につながった面もある。
しかし、阿部大臣は「教育勅語は、日本国憲法の制定などをもって法制上の効力を喪失しているものと承知している」と述べ、政府見解としてはあくまで教育勅語の公的利用に対して慎重な立場を崩していない。
教育勅語の歴史と「排除決議」
教育勅語は1890年、明治天皇の名のもと発布された文書で、「忠君愛国」「父母ニ孝ニ」などの徳目を説き、戦前の学校教育の中核をなしていた。しかし戦後、日本国憲法のもとで国民主権・基本的人権の尊重が原則となる中、教育勅語が持つ「国家への無条件の忠誠」や「神話的国体観」は、民主主義と相容れないとされるようになった。
1948年には衆議院で「排除決議」、参議院で「失効確認決議」が採択され、事実上の公的効力を失っている。これにより、教育現場での使用も厳しく制限されるようになった。
「明治の価値観を今に持ち込むのはさすがに無理がある」
「尊重するのは自由だが、義務教育に持ち込むのは違う」
「教育勅語は神聖視されすぎ。時代錯誤では?」
「国民ではなく“臣民”を育てたいのか」
「そんなに道徳を教えたいなら、まず憲法を守ってからにして」
有権者の声からも、教育勅語の教育現場への導入については根強い懐疑と警戒感がある。
過去の政権でも物議 安倍政権下での答弁が波紋
教育勅語をめぐる議論は今に始まったものではない。2017年、安倍晋三政権は「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との閣議決定を行い、一定の柔軟性を認めた。これにより、一部の私立学校では教材や行事の中で教育勅語を活用する例も見られた。
2018年には当時の柴山昌彦文科相が「道徳教育に使える普遍性がある」と発言し、野党や教育関係者から激しい批判を浴びた。今回の参政党の姿勢も、こうした流れの延長線上にあるが、あくまで文科省は「憲法に反しない形」という前提を重視している。
とはいえ、法的効力を失った文書を「教育の基本に据える」という発想そのものが、現行の教育制度や価値観と大きくかけ離れているとの指摘もある。
参政党の「保守路線」強化に懸念も
参政党は教育勅語だけでなく、自主憲法制定、皇室制度の見直し、スパイ防止法の制定など、右派色の強い政策を積極的に掲げており、今回の選挙でも保守層の受け皿として存在感を増した。一方で、その主張には「過去への郷愁が強すぎる」「国民より国家を重視している」との批判も出ている。
教育は、次代を担う子どもたちにどのような価値観を育むかが問われる分野だ。明治期の理念をそのまま現代に持ち込むことが果たして適切なのか。今回の文科相の発言は、そうした議論に一定の歯止めをかける意図があると見られる。
今後、臨時国会や文教政策をめぐる場面で、教育勅語の扱いが再び政治争点化する可能性もある。参政党の主張が保守層を超えて広がるのか、それとも限定的な支持にとどまるのかは、教育の現場や国民の受け止め方次第だ。