2025-10-14 コメント投稿する ▼
さいたま市が訪問看護ステーション指定取り消し、看護師名義借りで福祉コンサル関与
さいたま市が2025年10月14日、看護師の名義を借りて人員基準を満たしたように装い、不正に事業所の指定を受けていたとして、市内の訪問看護ステーション「Arche(アーチェ)」を指定取り消しとする行政処分を発表しました。
さいたま市が2025年10月14日、看護師の名義を借りて人員基準を満たしたように装い、不正に事業所の指定を受けていたとして、市内の訪問看護ステーション「Arche(アーチェ)」を指定取り消しとする行政処分を発表しました。関係者によると、契約していた福祉の経営コンサルタントが別の県で働く看護師の名義を貸しており、組織的な不正の疑いが浮上しています。
山形と静岡から名義借り
指定取り消しとなったのは、一般社団法人「onehand」が運営する訪問看護ステーションArcheです。さいたま市や関係者によると、訪問看護ステーションの開設には常勤換算で看護職員2.5人の配置が必要ですが、同法人は福祉コンサルが運営する山形県と静岡県のステーションから看護師の名義を借り、人員基準を満たしたように偽装していました。
2024年4月の開設以降、市が立ち入り検査に入った2025年7月まで基準違反の状態で運営していたことになります。訪問看護は看護師らが患者宅を訪ねて医療的ケアや生活支援をするサービスで、運営事業者には公的医療保険や介護保険から報酬が支払われます。財源は税金と保険料、患者負担です。
関係者によると、実際に働いていた看護師は「シフト表には3人の看護師の名前があったが、2人は実際には働いていなかった。顔を見たこともない」と証言しています。法人の代表に確認すると、「名義だけ貸してもらった」という答えだったといいます。
処分逃れの意図か
市によると、法人側は名義借りを否定する一方、Archeの廃止予定を2025年9月中旬に届け出ました。市は処分を逃れようとする意図があったとみています。
訪問看護ステーションで働いていた竹内さん(仮名)は在職当時、不思議なことがありました。自分と合わせて看護師3人のシフト表があったが、2人は実際には働いていませんでした。法人の代表に聞くと、介護福祉の経営コンサルタントから名義だけ貸してもらったという答えだったといいます。
「また名義貸しか」
「税金で運営してるのに不正とか許せない」
「福祉コンサルが組織的に関与してるって闇深い」
「行政のチェック体制どうなってるの」
「患者さんのこと考えたら絶対許されない」
行政のチェック体制に課題
名義貸しが発覚するケースの多くは内部告発がきっかけです。さいたま市も関係者から情報提供を受け、7月に立ち入り検査を実施しました。しかし定期的な実地指導では発覚しにくいのが実情です。
さいたま市の担当者は「看護師など職種によっては免許や資格証を提出してもらい、開設月の勤務表も求めているが、名義貸しをチェックするシステムはない。県をまたいでいようが、県内であってもそれは同じ」と認めています。
別の県の担当者も「雇用契約書や組織図まで提出させているが、従業員の名前の検索システムなどはないので、名義貸しは完全には見抜けない」と話しています。名義を借りた従業員の免許証や雇用契約書はコピーできてしまい、勤務表も名前を入れて作れば済むため、悪意を持った事業者が名義貸しや架空の名前で書類を作っても、行政は気付かないのが現状です。
氷山の一角の可能性
介護・福祉に詳しいある行政書士は「名義貸しのうわさはよく聞く。表面化するのは氷山の一角でしょう」と話しています。そして「事業所の指定申請は基本的に紙ベースでアナログ。デジタル化して、他の事業所と重複する名前があったら自動的にアラートが出るといったシステムにすればいいのに」とため息をついています。
厚生労働省の担当者は「特に対策は講じていない。基本的に性善説に立って制度を運用している」と釈明しました。名義貸しを検出するシステムについては「理論上は可能だが、自治体ごとに情報を管理しているので、全国統一でシステムを作るには費用や運用方法を検討しなければならない。現実的には難しい」と答えています。
不正請求を行った訪問看護ステーションには、指定の取り消し、指定の効力停止、加算の減算などの行政処分が科されます。指定取り消しとなれば事業を継続できなくなり、管理者は一定期間管理職に就けなくなる可能性もあります。
今回の事案は、福祉コンサルタントが複数の県にまたがって組織的に名義貸しを行っていた疑いがあり、悪質性が高いと見られています。税金と保険料を財源とする公的サービスで不正が行われていた実態は、制度への信頼を大きく損なうものです。