2025-08-24 コメント投稿する ▼
神戸市に「昆虫室」開設 外来生物と衛生害虫を生体展示、アース製薬が協力
神戸市に新たな学びの場「昆虫室」誕生
神戸市は24日、外来生物の問題について学べる「外来生物展示センター」(神戸市長田区)に新たな展示空間「昆虫室」を開設した。約300種の昆虫を紹介し、このうち15種・1000匹を生きたまま展示する点が最大の特徴だ。生体展示は2024年6月に包括連携協定を結んだアース製薬が提供し、研究所で培った飼育技術が活用されている。
昆虫室では「ツヤハダゴマダラカミキリ」や「クビアカツヤカミキリ」といった森林資源に被害を及ぼす外来カミキリムシ類をはじめ、「アルゼンチンアリ」「アカカミアリ」など都市生活に影響を及ぼす外来アリ類も取り上げている。さらに、公衆衛生の観点から注目される「トコジラミ(南京虫)」などの衛生害虫についても展示が行われ、来館者が身近な生活環境に潜むリスクを学べるよう工夫されている。
「外来生物は怖い存在だと思っていたが、実際に見て知識を得られるのはありがたい」
「子どもが目を輝かせて観察していた。夏休みの自由研究に役立ちそう」
「トコジラミの展示には正直ぞっとしたが、現実に増えていると聞いて納得」
「アース製薬と自治体が連携しているのは心強い」
「研究者の話が分かりやすく、親子で楽しめた」
SNS上でも来場者の感想が広がり、展示への関心の高さをうかがわせる。
体験型展示と人気イベント
昆虫室では、単なる標本展示にとどまらず、来場者が自宅や街中で昆虫が潜む場所を発見するシミュレーションを体験できる仕組みも整えられている。これにより、外来生物や衛生害虫が身近な存在であることを実感できる。
開設を記念した特別イベントでは、アース製薬赤穂研究所で害虫飼育を担当する研究員であり、『きらいになれない害虫図鑑』の著者として知られる有吉立氏が講演を行った。スクリーンに研究施設で飼育中のゴキブリ類の写真が映し出されると、参加者からざわめきが起きる場面もあったという。
見学会には神戸市内外から親子連れが多く集まり、募集人数90人は即日満員となる人気ぶりだった。副市長の黒田慶子氏は「顕微鏡を活用した観察や演習型のイベントも今後展開したい」と語り、教育的活用に意欲を示した。
外来生物問題の広がり
神戸市はこれまでも、外来昆虫による農林業被害や市街地での衛生被害への対応に力を入れてきた。特にカミキリムシによる樹木の枯死被害や、アルゼンチンアリの急速な繁殖は深刻で、市民生活に影響を及ぼしている。展示室はその実態を視覚的に伝えることで、一般市民の理解と協力を得る狙いがある。
外来生物展示センター「昆虫室」は、研究知見と地域行政が連携して生まれた新しい教育・学習の拠点だ。害虫や外来生物に対する恐怖だけでなく、正しい知識と理解を持つことが、地域全体での防除や予防につながる。展示と体験を通じて、昆虫と人間の関係を多角的に学ぶ機会を提供する施設として注目されている。