2025-12-04 コメント投稿する ▼
副首都構想で福岡県勢が大阪に挑戦状、南海トラフ被災リスク最小を武器に候補地名乗り
重要なのは、維新の副首都構想が大阪都構想と密接に関連している点だ。 維新が発表した副首都構想の法案骨子では、「特別区の設置」が副首都指定の条件とされており、これは大阪都構想の再実現を前提としたものになっている。 福岡県の服部誠太郎知事も「中枢機能のバックアップ拠点の候補地になると思っている」と発言し、県として副首都構想への関心を示している。
「大阪ありき」に福岡が異議申し立て
自維連立で現実味帯びる副首都構想、南海トラフ「被災最小」の九州勢が大阪ファーストに挑戦状
自民党と日本維新の会による連立政権が発足し、維新の「副首都構想」が政策協定に盛り込まれたことで、副首都の候補地選定を巡る動きが活発化している。維新が念頭に置く大阪に対し、福岡県の知事や市長らが相次いで名乗りを上げ、南海トラフ巨大地震への被災リスクの低さを武器に「オールジャパン」での議論を求めている。副首都指定は都市発展の起爆剤になる一方、地方分権の象徴としても位置づけられており、候補地選定の行方が注目される。
維新の副首都構想、大阪都構想と一体で推進
日本維新の会は2025年10月に自民党との連立政権合意に署名し、副首都構想について「臨時国会中に両党の協議体を設置し、2026年の通常国会で法案を成立させる」ことを明記した。維新が掲げる副首都構想は、東京一極集中を是正し、災害時に首都機能をバックアップできる体制を構築することを目的としている。
維新の吉村洋文代表は連立合意後の記者会見で、「いざという時の首都中枢機能をバックアップする国家の危機管理でもある。首都圏と伍するような、強い経済圏域を作っていく。これが副首都だ」と構想の意義を説明した。
重要なのは、維新の副首都構想が大阪都構想と密接に関連している点だ。維新が発表した副首都構想の法案骨子では、「特別区の設置」が副首都指定の条件とされており、これは大阪都構想の再実現を前提としたものになっている。つまり、維新にとって副首都構想は単なる地方分権政策ではなく、大阪都構想実現のための戦略的ツールという側面が強い。
福岡市長「まさに適地」、県知事も積極姿勢
このような「大阪ありき」の議論に対し、福岡県勢が積極的な姿勢を示している。福岡市の高島宗一郎市長は10月22日の記者会見で、「首都のバックアップ機能という言い方であれば、福岡はまさに適地だ」と明言した。
高島市長が強調するのは、災害リスクの低さだ。「南海トラフ地震を想定した時に同時被災のリスクが最も少ない大都市と言えば、これは日本海側の福岡市」と述べ、地理的優位性をアピールした。実際、政府の地震調査委員会が発表した全国地震動予測地図によると、今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は福岡市で6.2%と、全国47都道府県庁所在地中8番目に低い水準となっている。
福岡県の服部誠太郎知事も「中枢機能のバックアップ拠点の候補地になると思っている」と発言し、県として副首都構想への関心を示している。福岡県は南海トラフ巨大地震の被害想定でも、太平洋側の30都道府県に比べて被災リスクが大幅に低いとされており、この地理的優位性を前面に押し出している。
「大阪だけでなく、全国で議論すべき重要な問題だと思う」
「南海トラフ地震のリスクを考えれば、福岡の優位性は明らかだ」
「維新の副首都構想は大阪都構想の実現が前提なのが問題」
「災害に強い都市として福岡に注目が集まるのは当然」
「副首都は国家的プロジェクト、地域エゴではいけない」
北九州市、2023年から先行して「バックアップ首都構想」
さらに注目すべきは、北九州市が2023年から独自に「バックアップ首都構想」を推進してきた点だ。同市の武内和久市長は2023年2月の就任直後から、首都圏に集中する大企業の本社機能やデータセンター、政府機関を誘致する戦略を打ち出している。
武内市長は「電気、水は圧倒的に強い。それから交通インフラ。これは言うまでもなく陸海空全て持っている強い都市。北九州市の発想と考え方、取り組みに国での議論が追いついてきた」と自信を示す。同市によると、2024年度には90以上の企業が進出を決めており、バックアップ首都構想が一定の成果を上げていることを示している。
北九州市の取り組みの背景には、南海トラフ地震や首都直下地震への危機感がある。30年以内の発生確率が70~80%とされるこれらの災害では、東名阪地域がすべて被災対象となる可能性が指摘されており、企業の事業継続計画(BCP)の観点から地方分散への関心が高まっている。
国民民主党が対案で牽制、特別自治市構想を提示
一方、国民民主党は維新の副首都構想に対抗する動きを見せている。同党は「特別自治市」を設ける法案の検討を進めており、維新の大阪都構想への対案として位置づけている。榛葉賀津也幹事長は「副首都構想も大事だが、国民の優先順位は年収の壁見直しやガソリン税の暫定税率廃止ではないか」と述べ、維新の政策優先順位に疑問を呈している。
国民民主党の狙いは、自民党に選択肢を示すことで自維連携にくさびを打ち込むことだ。玉木雄一郎代表も「権力維持に手を貸す形だと民意に反する」と維新を牽制しており、副首都構想を巡る政治的駆け引きが激化している。
費用は4兆~7.5兆円、財源確保が課題
副首都構想の実現には莫大な費用がかかることも課題だ。1997年に国土交通省の首都機能移転問題に関する懇談会が示した試算では、国会を中心に機能移転する場合は4.0兆円、行政機関を半分移転させる場合は7.5兆円の費用がかかるとされた。
野村総合研究所の木内登英氏は「副首都構想の費用対効果の検討を慎重に行うことが求められる。大阪への過度な集中が新たな弊害を生む可能性もある」と指摘している。また、財源確保の方法についても具体的な道筋は示されておらず、実現に向けては多くの課題が残されている。
地方分権の象徴か、維新の政治戦略か
副首都構想を巡る議論では、それが真の地方分権推進策なのか、それとも維新の政治戦略なのかという根本的な問題が浮かび上がっている。福岡県勢が「オールジャパン」での議論を求めるのも、大阪ありきで進む現状への危機感の表れといえる。
高市早苗首相は所信表明演説で「首都および副首都の責務と機能に関する検討を急ぐ」と述べたが、候補地について具体的な言及は避けている。2026年の通常国会での法案成立を目指す中で、候補地選定のプロセスをどう設計するかが重要な焦点となりそうだ。
福岡県勢の積極的な名乗りは、副首都構想が単なる大阪優遇策ではなく、真に国益に適う政策であるべきだという問題提起でもある。災害リスクの分散や経済圏の多極化という本来の目的を実現するためには、候補地の公平な比較検討が不可欠だろう。