2025-05-16 コメント投稿する ▼
日本学術会議任命拒否問題、東京地裁が文書全面開示命令 原告らの人格権侵害訴え
学術会議任命拒否問題で東京地裁が全面開示命令
日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否された問題を巡り、東京地方裁判所(篠田賢治裁判長)は16日、政府が関連文書の全面開示を命じる判決を下した。判決は、政府が会員の任命に関して作成した法解釈の文書が「公益性が極めて大きい」として、国民への情報開示が不可欠と判断した。
この裁判は、2020年に菅義偉首相(当時)が6人の会員候補の任命を拒否したことが発端。6人の研究者と支援者約170人が原告となり、政府に対し任命拒否の理由を記した文書の開示を求めて提訴していた。
原告側、人格権と情報コントロール権の侵害を主張
裁判で原告側の弁護士は、任命拒否された6人が情報の開示を求めるのは憲法13条に基づく「自己情報コントロール権」を行使していると指摘。特に6人は理由を示されないまま拒否され、その後の誹謗中傷によって人格権も侵害されたと強調した。
米倉洋子弁護士は「6人が学者としての信頼を損なわれ、精神的苦痛を受けた事実を無視してはならない」と述べた。さらに「政府は任命拒否の判断に使用した文書は存在しないと主張しているが、それは現実味がなく、国民への説明責任を果たしていない」と批判した。
政府の文書不存在主張に対する疑念
原告の一人である岡田正則・早稲田大学教授は、政府が「任命拒否の判断材料となる文書はない」としていることに疑問を呈した。「何も資料がない状態で突然『この6人を外せ』という決定がなされたとは到底信じられない」と語り、任命の経緯が不透明であることを強調した。
同じく原告の小澤隆一・東京慈恵会医科大学名誉教授も、岸田文雄前首相や石破茂首相が「任命は終了している」として説明を避けている点を問題視。「説明責任を果たさず、国民を納得させられる状況ではない」と述べた。
学術会議の独立性を守るための訴訟
この訴訟は、政府が学術会議の会員任命に介入したことが学問の自由に反するのではないかという問題提起でもある。原告側は、政府が任命拒否の理由を文書化していないと主張すること自体が、公文書管理の観点から重大な問題であると指摘している。
また、原告の一人である小森田秋夫・東京大学名誉教授は「この問題は単に6人の問題ではなく、学問の自由や民主主義の基盤を守るための戦いだ」と語り、政府に対して透明性と説明責任を求めた。
* 東京地裁は、学術会議任命拒否問題に関する政府の関連文書の全面開示を命じた。
* 原告は、自己情報コントロール権と人格権の侵害を訴え、理由のない任命拒否で精神的苦痛を受けたと主張。
* 政府は「任命判断に関する文書は存在しない」とするが、原告側はその主張に強い疑問を示した。
* この訴訟は学術会議の独立性と学問の自由を守るための重要な争点となっている。