2025-03-17 コメント投稿する ▼
宮沢家の世襲断念で自民刷新へ 広島5区に揺れる名門地盤の終焉と試練
“宮沢家の地盤”が揺らぐ 自民党が世襲に見切り
かつて“政界の名門”と称された宮沢家の地盤が、大きく揺らいでいる。自民党広島県連は、次期衆議院選挙の広島5区で、宮沢洋一税調会長の次男を擁立しない方針を固め、弁護士の今井健仁氏(39)を新たな候補予定者に選出した。
宮沢一族といえば、元総理・宮沢喜一氏を頂点とし、戦後自民党政治の中枢を担ってきた存在だ。特に広島5区は、旧広島3区の一部として、喜一氏が長年にわたり地盤を築いてきた“宮沢王国”の中心地である。現在は甥にあたる宮沢洋一氏が参議院議員として活動し、政界での影響力を保っている。
その地盤を次の世代に託すべく、洋一氏の次男が自民党の公募に名乗りを上げたことは、多くの党内関係者にとって自然な流れと見られていた。だが、最終的に擁立は見送られた。その背景には、世襲批判と党の刷新イメージへの配慮という、時代の空気が色濃く影響していた。
「宮沢の地盤」への回帰を阻んだ世論の圧力
今回の選考にあたっては、公募による候補選びが形式上行われたが、実質的には「宮沢家か、それ以外か」の選択だったと言ってよい。党内では「宮沢の名前にはブランド力がある」「地元組織との連携もスムーズになる」といった期待の声が出る一方、「また世襲か」「結局、政治は血縁なのか」との批判も根強かった。
ある県連関係者は、「今の時代に、宮沢家の後継だからという理由だけで候補者を決めることはできない。無党派層の反発が大きくなれば、選挙に勝てない」と打ち明ける。
かつては“宮沢”という名字だけで地元の票が動いた。しかし、政治とカネ、利権、企業献金、そして世襲――これらが国民の間で政治不信を深めてきた今、その神通力も通用しなくなっている。
「宮沢の名前がまだ通ると思ってること自体がズレてる。」
「昭和の政治家の話かと思った。世襲なんてもう時代遅れ。」
「父の看板だけで出るなら、政治の本質を語ってほしい。」
「宮沢喜一の時代とは違う。今は実力主義であるべき。」
「一族の名前に頼らず、公募で勝った人を評価したい。」
世襲拒否が象徴する政治の転換点
結果として県連は、東京で法律事務所を経営していた今井健仁氏を支部長に選出した。彼は京都市出身で、昨年広島県尾道市に移住。地元活動を続けながら、選考過程で存在感を示した。
とはいえ、「宮沢家の地盤を継ぐ人物がいなくなった」わけではない。洋一氏本人はまだ現職の参議院議員であり、今後も自民党内で一定の影響力を持ち続ける。ただし、「宮沢」という名前が衆院の選挙区で直接票を集める立場に再び立つかは、不透明になった。
世襲政治は、減税やインボイス廃止、スパイ防止法制定といった、現代日本が直面する本質的な課題への関心をそらし、血縁や組織力による選挙互助に陥る危険をはらむ。特定の家系が政治を独占する構造こそが、今の政治停滞を生んでいる一因と指摘する声もある。
「地元有力者の子ばかりが政治をやるようじゃ、国はよくならない。」
「宮沢の次男より、実務経験ある弁護士の方がまだ現実的。」
名門の“終わりの始まり”か、それとも一時の後退か
今回の選考結果は、自民党の刷新とイメージ転換の一環として受け止められているが、一方で「宮沢一族の終焉」と見るには早計かもしれない。今井氏が今後、地元にどれだけ浸透し、有権者の信頼を得ていけるかは未知数である。
また、宮沢家を支持してきた地元有力者や経済界との関係が今後どうなるかも注視される。形式上は候補者ではないとはいえ、実質的な影響力を背景に、今後も党内外に影を落とす可能性は十分にある。
政治の名門家系が、一度主役の座を離れたとき、再び脚光を浴びるのは容易ではない。だが、宮沢家の歩んできた政治史は、そう簡単に幕を下ろすものではない。その意味で、今回の決定は“宮沢王国の終焉”ではなく、“時代との距離感”を図り直す契機なのかもしれない。