2025-06-11 コメント投稿する ▼
紙智子議員が参院本会議で有終の討論 24年の信念と国民への訴えに与野党から拍手
紙智子議員、最後の討論で24年間の軌跡と信念を語る
6月11日の参院本会議において、日本共産党の紙智子議員が2023年度決算に対する反対討論に立ち、議員生活最後の演説を行った。今期での引退を表明している紙氏は、24年間の国会活動を振り返りながら、国民の声に寄り添い続けた政治家としての信念を語り、議場からは与野党を超えた拍手が沸き起こった。
演説の冒頭で紙氏は、2001年の初当選直後に発覚した国内初のBSE(牛海綿状脳症)問題を取り上げ、閉会中審査を求め実現にこぎつけた経験を紹介。「国会は、国民の切実な声に応えて動くべきだ」との認識が自身の政治活動の原点になったと述懐した。
東日本大震災と原発事故が問い直した政治の責任
続いて紙氏は、2011年の東日本大震災直後、福島県いわき市に足を運び目の当たりにした惨状と、福島第一原発の爆発事故がもたらした恐怖を語った。その体験をもとに、原発再稼働に反対する数万人規模の行動が全国に広がったことを「国民の意思が政治を動かす力になると実感した」と強調。
原発や防衛政策に限らず、国民の声に根ざす政治こそが民主主義の本質であるという考えが、彼女の一貫した立場を支えてきた。
「こんなに心を打たれる討論は久しぶり」
「国民の声が政治を動かすという言葉、胸に刻みたい」
「涙が出た。与野党関係なく、敬意を表したい」
「平和外交という言葉が、こんなにも重く響くとは」
「志高清遠…この言葉を今の政治家全員に贈りたい」
父の戦争体験が平和主義の原点に
紙氏の平和主義は、彼女の父親が残した記憶にも深く根ざしていた。航空整備士だった父は、特攻隊の若者たちを前夜に水杯で見送り、その誰一人として帰らなかったという事実に、「あんな戦争を二度と繰り返してはいけない」と語り続けたという。
紙氏はその思いを受け継ぎ、安保法制への反対や憲法9条の擁護に注力してきた。演説の中で「9条を生かした平和外交を強く求める」と訴えた際には、他党議員からも「そうだ!」と声が上がり、与野党問わず万雷の拍手が議場を包んだ。
これは単なる形式的な引退スピーチではなく、彼女の歩みそのものが、戦後日本の平和主義を体現してきた証とも言える。
規制緩和と自由化への警鐘、農政の再建を訴える
紙氏のもう一つの政治的主軸は「食と農を守る戦い」だった。この24年間、政府の新自由主義的な政策、すなわち規制緩和と自由化が、日本の農業基盤をいかに蝕んできたかを批判し、「農業・農村を軽んじる国に未来はない」と強く訴えた。
TPPや日欧EPAなど、農産物市場を解放する方向に政策が傾く一方で、生産者は価格変動のリスクにさらされ、自助努力ばかりが求められる現状が続いている。紙氏は、「人と環境に優しい農政」への転換こそが、国の未来を築く鍵だと明言した。
これは単なる反対論ではなく、農政の構造的問題を見据えた政策転換の呼びかけであり、地方の現場で苦しむ生産者へのメッセージでもある。
「志高清遠」――志を高く、遠くを見て歩む
演説の締めくくりに紙氏は、北海道・えりも町の漁師から教わった「志高清遠」という言葉を紹介した。「志を高く、清い心で、遠大な理想を持って生きよ」というその言葉には、24年間、地道に活動を続けた彼女の政治家としての姿勢が凝縮されていた。
政治とは、目先の利益や人気取りではなく、将来の世代に何を遺すかの営みである。紙氏の演説は、まさにその理念を体現したものであり、与野党を超えて多くの議員の共感を呼んだ。
確かに彼女の主張には、現実主義的な外交・防衛政策とのギャップもある。だが、その一貫した信念と真摯な姿勢は、現代政治が失いつつある「理念と覚悟」のあり方を教えてくれる。