2025-06-08 コメント投稿する ▼
アイヌ差別発言議員の公認に「極めて遺憾」 協会理事長が苦言 紙智子氏は遺骨返還の実現を訴え
アイヌ協会「差別発言の議員を公認するのは極めて遺憾」
札幌市で6月8日、公益社団法人北海道アイヌ協会の定時総会が開かれた。会場では、エカシ・フチ(敬愛すべき長老)への生活支援、持ち去られた遺骨の返還促進、そして慰霊の取り組み強化などが今後の方針として確認された。
開会あいさつに立った大川勝理事長は、近年繰り返されてきたアイヌ民族に対する差別発言について、「国民に範を垂れるべき立場の者による発言が人権侵犯の認定を受けたにもかかわらず、公党から公認を受けている」として、名指しは避けながらも、杉田水脈前衆院議員と自民党の対応を強く批判した。
「同胞のつらく悲しい気持ちを思えば、極めて遺憾だ」と語り、場内からは同意の拍手が起こった。差別が“処分されない現実”に対する当事者の痛切な思いが滲み出る発言となった。
「差別が“お咎めなし”で続くのは社会として危うい」
「謝罪もなく公認って、アイヌの尊厳はどこへいった」
「政治が一部のヘイトを許してるように見えてしまう」
SNSでも、アイヌ協会理事長の発言に対する共感の声が多数寄せられた。
「正しい理解が必要」広がる教育・文化支援の必要性
大川理事長はまた、「アイヌ民族の文化や歴史に対する正しい理解がますます必要だ」と強調し、今後は教育現場やメディア、政治の場での啓発活動が不可欠であると述べた。
協会としては、道内外の自治体や教育機関と連携し、アイヌ民族に対する偏見の解消と、誇りをもって文化を継承できる社会の実現に取り組むとしている。
その背景には、近年インターネット上や一部政治家によるヘイト発言の横行があり、若年層への影響も懸念されている。差別の根を絶つためには、「無知から生まれる偏見」に向き合う長期的な啓発活動が必要だという指摘が広がっている。
紙智子氏「遺骨返還は謝罪とともに」
総会には各政党の国会議員も出席。日本共産党の紙智子参院議員(アイヌ先住民族の権利委員会責任者)は、会場で挨拶に立ち、未返還のアイヌ遺骨について言及。「黙って持ち去った側が、まず謝罪し、返還するのが本筋だ」と明確な姿勢を示した。
大学や博物館などによるアイヌ遺骨の無断収集は、明治時代以降に学術研究を名目として繰り返されてきた歴史がある。返還を求める運動は長年続いてきたが、今も全国各地で数百体の遺骨が返されていないのが現状だ。
紙氏は、「返還の遅れは二次的な差別そのものであり、今こそ政治が責任をもって動くべきだ」と強調。国会でも引き続きこの問題を追及していくと表明した。
“民族の尊厳”守るために問われる政治の責任
今回の総会は、差別発言への社会的・政治的な処分の甘さ、遺骨返還の遅れ、文化継承の支援体制の不足といった、アイヌ民族を取り巻く深刻な課題が改めて浮き彫りになる場となった。
形式的な「配慮」ではなく、実際に被害と向き合い、政策として補償・修復を進める――。その責任を最も問われるのは、与党・自民党をはじめとした政治そのものだ。
杉田水脈議員による過去の発言に対しては、2022年に法務局が「人権侵犯」に該当すると認定。にもかかわらず、自民党は2025年の選挙に向けて杉田氏を再び公認候補として擁立する姿勢を示しており、「反省なき公認」への批判が強まっている。
「共生社会」「多様性」といった言葉が空疎な響きにならないためには、社会が差別を許容しない意思を明確に示すことが不可欠だ。今回のアイヌ協会総会の場での発言は、その意思を再確認する重要な一歩となった。