2025-08-21 コメント投稿する ▼
和倉温泉の再建で旅館経営者が要望 雇用調整助成金延長と補助金拡充が課題
和倉温泉の再建と雇用維持の課題
能登半島地震から半年以上が経過しても、石川県七尾市の和倉温泉では多くの旅館・ホテルが再開できないままだ。震災前には20館あった宿泊施設のうち、営業を再開できているのはわずか6館。1300室あった客室は200~300室にまで減り、観光業の基盤は大きく揺らいでいる。営業再開の見込みは2026年から27年が中心で、中には28年までかかる施設もある。
和倉温泉観光協会の奥田一博会長は「過去の震災でもこれほど長期にわたる温泉地の被害は前例がない。最大の課題は建物再建までの雇用維持だ」と危機感をあらわにした。観光業は建物と従業員によって支えられており、従業員が地域を離れれば再建が一層難しくなると指摘している。
「雇用をつなぎとめないと復興は不可能」
「資材高騰で補助金の枠内では到底足りない」
「従業員が市外に流出すれば和倉は終わる」
「旅館業は地域を守るセーフティーネット」
「国の支援がなければ観光地は立ち行かない」
旅館経営者からの要望
経営者からは二つの要望が出された。第一に、今年12月で終了予定の雇用調整助成金を、営業再開が集中する2027年まで延長すること。従業員の生活を支えるためには、最低でも2年の延長が不可欠とされる。第二に、建物再建に充てられる「なりわい再建支援補助金」の上限(15億円)を引き上げ、対象を見直すことだ。
ある老舗旅館の経営幹部は「四つの旅館を再建する計画だが、補助金は1社あたり15億円が上限。資材の高騰もあり、この枠内では復旧すら難しい」と語り、現状の制度設計では実情に追いつかないと訴えた。観光協会の幹部も「厚労省からは『生産性』を繰り返し指摘されたが、旅館業は収入が低くても働き続ける人々が支えている。地域の雇用のセーフティーネットとして守るべきだ」と訴えた。
国会議員団の対応
現地を訪れた日本共産党の国会議員団は、小池晃書記局長をはじめ、堀川あきこ衆院議員、仁比聡平参院議員、藤野保史元衆院議員、佐藤正幸県議ら。小池氏は「和倉温泉の再建は能登復興のカギ。ここで起きたことは今後全国の観光地でも起こりうる。雇用調整助成金の延長などを国に求めていく」と述べ、国政の場で要望を取り上げていく考えを示した。
堀川議員も現場で旅館経営者の声を丁寧に聞き取り、特に従業員の生活を支える仕組みの強化を重視する姿勢を見せた。仁比議員は「地域に根ざした産業を守ることが、住民の暮らしを守ることにつながる」と強調し、補助金制度の見直しを国に迫る考えを示した。
復興の行方と全国への影響
和倉温泉の再建は単なる観光業の回復にとどまらず、能登全体の復興の象徴とされている。雇用維持が実現できなければ、従業員が地域を離れ、観光業はもちろん地域社会そのものが衰退しかねない。
また、今回の問題は和倉温泉だけでなく、日本各地の観光地に共通する課題を映し出している。地震や豪雨といった自然災害の増加が懸念される中、観光業をどう支えるかは全国規模での課題であり、今回の要望がどこまで政策に反映されるかが注目される。