2025-04-22 コメント投稿する ▼
政府に遺骨収容支援を要請 長生炭鉱事故から83年、市民団体と議員らが連携
長生炭鉱水没事故:遺骨収容に向けた市民団体の要請と政府の対応
1942年2月3日、山口県宇部市の長生炭鉱で発生した水没事故により、朝鮮半島出身者136人を含む183人が犠牲となった。この事故から83年が経過した現在も、犠牲者の遺骨は海底の坑道内に残されたままである。市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下、刻む会)は、遺骨の収容と遺族への返還を目指し、政府に対して技術的・財政的支援を要請している。
政府との意見交換会:市民団体の要請
2025年4月22日、刻む会は国会内で厚生労働省および外務省の担当者と意見交換会を開催した。この会合には、日本共産党の小池晃書記局長、倉林明子副委員長、社民党の大椿裕子、福島みずほ両参院議員、立憲民主党の有田芳生、平岡秀夫両衆院議員らが同席した。刻む会は以下の要請を提出した。
- 遺骨収容への技術的・財政的支援
- 専門家を同行させた厚生労働省幹部らの現地視察
- 刻む会と厚労相、外相との面会
- 来年2月の犠牲者追悼集会への政府代表参加
厚生労働省の担当者は、石破茂首相の「政府として支援を検討する」との答弁を踏まえ、「専門的な知見をうかがい対応を検討したい」と述べたが、現地視察については「考えていない」との姿勢を示した。これに対し、小池氏は「ステージは変わった。少なくとも現地視察を」と主張した。
遺骨収容活動の現状と課題
刻む会は、遺骨収容のために潜水調査を実施している。2025年4月1日から4日間、日韓合同の潜水調査が行われ、韓国人ダイバーと日本人の水中探検家が参加した。調査では、坑道内の障害物除去や遺骨の所在確認が試みられたが、堆積物の除去が難航し、遺骨の収容には至っていない。井上洋子共同代表は、「遺骨収集は私たちが考えていたよりも厳しい現実にあたっているが、今後も続けていく。財政的にも技術的にも国が出なければ解決しない問題だ」と訴えた。
政府の対応と市民団体の主張
政府は、遺骨収容について「戦没者ではない方の遺骨の調査、収集は現時点で困難」との立場を示している。これに対し、刻む会の井上氏は「戦没者というのは、日本政府が勝手に線引きしたうえでつくられた概念だ」と述べ、政府の対応を批判した。また、社民党の大椿議員は「戦時中、強制労働をさせられた方々はある種の戦没者ではないか。そう認識を変えていくよう迫っていく」と述べた。
遺族の思いと市民の連帯
韓国から訪れた遺族や在日朝鮮人の人々は、遺骨収容活動に深い感慨を抱いている。韓国から訪れた遺族会長の楊玄氏は、「犠牲者たちの尊厳を回復し、彼らの犠牲を歴史に正しく記録し残すことが私たちのなすべきこと」と述べた。また、在日朝鮮人の男性は、「30年前から日本の方が継続して調査を進めてくれたおかげでここまできた。感謝しかない」と語った。
今後の展望
刻む会は、遺骨収容と遺族への返還を目指し、引き続き政府への働きかけを行う方針である。また、次回の潜水調査は2025年1月31日から2月2日を予定しており、遺骨の収容に向けた活動が続けられる。政府が積極的な対応を示すことが、遺族の願いを叶える第一歩となるだろう。