2025-07-25 コメント: 1件 ▼
大阪市の特区民泊に苦情続出 「住居地域から除外」など対策本格化へ
ごみ・騒音・安全不安…特区民泊に市民の不満噴出
大阪市は7月25日、国家戦略特区制度による「特区民泊」についての規制のあり方を検討するプロジェクトチーム(PT)会議を開いた。市内には全国の特区民泊施設の約95%が集中しており、訪日外国人の増加に伴う宿泊需要に応じた形だが、ごみ出しルールの無視や深夜の騒音、子どもの安全への不安など、周辺住民の生活環境に深刻な影響が出ている。
現場では、これまでの制度設計では対応できない問題が多発しており、市は運営地域の制限強化をはじめ、施設運営の実態調査や指導権限の拡充など、8項目の課題と対策案を整理。9月までに国との協議を経て制度改善を具体化する方針だ。
特区民泊とは何か 制度拡大の陰で進む地域疲弊
特区民泊は、旅館業法の特例として、住居用の居室を宿泊サービスに活用することを可能とする制度。大阪市では平成28年に導入され、今年5月末時点で全国6,693件のうち約95%にあたる6,331件が市内に集中している。
この制度はインバウンド観光需要に応える目的で導入されたが、その裏で地域社会に深刻なひずみが生じている。市の報告によれば、特区民泊の増加とともに旅館・ホテルの稼働率は85%から75%へと緩和されたものの、苦情は急増。その6割が、もともと店舗の立地が制限される「住居地域」から寄せられている。
実際に寄せられている声は切実だ。
「夜中に大声で騒がれて眠れない。民泊って迷惑施設だよ」
「ごみをいつどこに出していいかも分からない人が毎週入れ替わっていて不安」
「小学生の子どもが知らない外国人に声をかけられた。怖すぎる」
「ルールを守らない海外の事業者が多すぎる」
「一体誰のための制度なの?市民の生活を守ってほしい」
国民・市民・有権者の声からも、制度の運用に対する不信感と怒りが表面化している。
制度の「穴」 把握も指導もできない現実
現在の制度には、いくつもの構造的な欠陥がある。まず、事業者の多くが海外居住者であり、トラブルがあっても直接の指導や連絡が困難。また、市が各施設の運営状況を定期的に把握する仕組みも存在せず、問題が起きてからの対応が後手に回っているのが現状だ。
さらに、運営上の不備があっても、認定取り消しや不利益処分に関する明確な基準が整備されていない。これにより、実質的に野放し状態の施設が存在しているとの指摘も出ている。
市は今後、施設のある地域を見直し、「住居専用地域」に加えて「住居地域」も特区民泊の対象から外す方向で検討。さらに、海外居住者に代わって国内の代行業者を市が直接指導できる法的権限の整備も求めていく。こうした規制強化の実現には、国による法改正が必要となるため、市は9月までに国との協議を進める。
市長も「年度内対応」強調 全施設調査で実態把握へ
PT会議後、横山英幸市長は取材に応じ、「ビジョンを持って体制強化に取り組む」と述べ、年内にも一部の対策を先行実施する意向を示した。また、運営の実態を把握するため、全市内の特区民泊施設を対象にした調査を行う方向で調整を進めている。
一方で、制度の根幹にかかわる改革には国の法制度が必要であり、市だけでは限界もある。大阪市はこれまでも特区制度を積極的に活用してきたが、今後は「市民の生活と観光施策のバランス」をどう取るかが問われることになる。
地域経済や観光振興も重要だが、それが市民の暮らしと安全を犠牲にして成り立つものであってはならない。制度の柔軟性を悪用するような事業者への厳格な対応と、地域住民の不安を払拭する仕組みの構築が急務である。