2025-09-30 コメント投稿する ▼
大阪市の特区民泊 停止だけでは不十分 既存施設を全件再審査し厳格運用が必須
入口規制と並行して、既存施設の全件再審査を直ちに始める必要があります。 許可に至る審査の段階から、生活環境保全の観点をより厳しく適用し、近隣説明や苦情対応の実効性を文書と現地で二重に検証する仕組みに改めるべきです。 中期では、近隣説明の実施証跡、苦情対応の標準時間、清掃・ごみ回収の委託契約の実効性を審査基準に明記します。
大阪市の停止方針は不十分—根本は許可体制の欠陥
大阪市が特区民泊の新規受け付けを当面停止する方針を示しましたが、住民生活を守るには不十分です。騒音やごみ放置などの苦情が積み上がった背景には、急増する申請に対して審査と監督の体制整備が追いつかなかったという構造的な問題があります。停止は入口を狭める対応にすぎず、すでに稼働している施設の適法性と運営水準を確認しない限り、被害は減りません。
大阪市民の困りごとは日常生活の質に直結します。夜間の大音量、共用部の占有、不適切なごみ排出は、集合住宅や住宅地に深刻なストレスを与えます。これまでの許可・監督の運用は、実態把握と是正の両面で後追いとなり、苦情の増加に行政対応が追いつかない状態を招きました。入口規制と並行して、既存施設の全件再審査を直ちに始める必要があります。
数字が示す危機—施設の偏在と苦情の急増
全国の認定施設は2025年7月末時点で7091件であり、そのうち大阪市が6696件を占めます。市内集中は9割超という異常な偏在で、2023年3月時点から2倍以上に膨らみました。苦情の件数も、2024年度は399件、2025年度は8月末時点で250件と前年同期比1.5倍のペースで推移しています。母数の拡大と管理の遅れが相まって、苦情の増勢が止まらないことが読み取れます。
現行制度は費用対効果の観点でも歪みが出ています。施設側の遵守事項は形式的に整えていても、現場の行動にまで落ちていない事例が多く見られます。許可に至る審査の段階から、生活環境保全の観点をより厳しく適用し、近隣説明や苦情対応の実効性を文書と現地で二重に検証する仕組みに改めるべきです。
「深夜の騒音で眠れません」
「週末ごとにスーツケースが廊下をふさぎます」
「分別しないごみが放置されて困ります」
「運営者に連絡しても改善されません」
「子どもが怖がって外に出たがりません」
全件再審査—リスク別に是正・停止・取消を迅速化
停止期間中に実施すべきは、既存の全施設の再審査です。まず、住居系用途地域や学校・保育施設等に近接する物件を優先して現地確認を行い、苦情履歴、有害事象、消防・衛生の遵守状況を総点検します。次に、騒音計測や出入口カメラのログ、清掃契約の実履行など、運営の実効性を証拠で示すことを義務付けます。基準に達しない施設は、是正命令の期限を切り、未達の場合は営業停止や認定取消に段階的に移行します。
その際、審査書類の形式審査から実地検証重視へと軸足を移すことが不可欠です。住民通報の一次受付、現地即応、是正勧告、聴聞、取消までの平均処理日数を指標化し、公開することで、行政も運営者も改善インセンティブを持てます。市は監督権限の限界を踏まえつつ、国に対して自治体裁量の拡大や罰則強化、用途地域の指定見直しを提案するべきです。
生活環境を守る実装策—即時・中期・恒久
即時対応として、専門部署を核にしたホットラインと夜間巡回を増強し、悪質事案には即日是正命令を発します。中期では、近隣説明の実施証跡、苦情対応の標準時間、清掃・ごみ回収の委託契約の実効性を審査基準に明記します。恒久策として、住宅地での新規認定の厳格化と、既存施設の用途地域ごとの運営基準の差別化を進めます。
横山英幸氏=大阪市長=は税収増や水道料金の抑制効果に言及しますが、地域の受容性を超えた拡大は結果として逆効果になります。観光と居住の両立を図るには、入口規制だけでなく、既存施設の全件再審査と厳格な運用が不可欠です。行政の遅れを取り戻し、被害の未然防止と早期是正に資源を集中させることが、市民の生活を守る最短経路です。