2025-11-07 コメント投稿する ▼
立花孝志氏が田久保真紀前伊東市長を観光大使に起用表明
政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(58歳)は2025年11月7日の記者会見で、静岡県伊東市長選(12月7日告示、14日投開票)に当選した場合、学歴詐称疑惑で失職した田久保真紀前市長(55歳)を観光大使に起用したい考えを示しました。「正義感や使命感で市民のために頑張っていた。あのキャラクターは伊東市が生んだ観光大使だ」と述べ、話題性を活用した経済効果を期待するとしています。一方で投票者への3万円商品券配布という公職選挙法に抵触する可能性のある公約も掲げ、波紋を呼んでいます。
「19.2秒」で流行語大賞ノミネートの田久保氏
田久保真紀氏は2025年5月の伊東市長選で初当選しましたが、6月に匿名文書で学歴詐称疑惑が指摘されました。東洋大学法学部卒業としていたところ、実際は除籍であることが判明し、市議会で大きな問題となりました。
特に注目を集めたのは、田久保氏が市議会議長と副議長に「卒業証書」とされる文書を見せた際の時間です。田久保氏は「チラ見せではなく、約19.2秒見ていただいた」と釈明し、この数字が全国的な話題となりました。
「卒業証書 19.2秒」は2025年新語・流行語大賞のノミネート30語に選ばれ、12月1日の発表を控えています。田久保氏は2度の不信任決議可決により10月31日に失職しましたが、今回の市長選への出馬準備を進めているとみられています。
立花氏「メディアが取り上げるのは数字を持っているから」
立花氏は田久保氏の起用理由について「メディアが取り上げるのは数字を持っているからだ。共感する人もいるだろう。いわゆるふてぶてしい態度も逆に注目を集めている」と説明しました。
田久保氏による市議会解散に伴う10月の市議選の経費に6300万円が計上されたことを挙げ、「観光大使をやってもらえれば6300万の経済効果じゃない。十分回収できる」と述べ、Tシャツやまんじゅうなど田久保氏の関連グッズ販売も検討するという独特の構想を明かしました。
田久保氏は紫色のリュックやカバンを持ってマイカーで登庁する姿も報じられており、立花氏は「庶民的な市長だった。いい所、悪い所双方あり、それがまたお茶目だ」と評価しています。立花氏は田久保氏と面会したといい、「愛嬌のあるまともな人で、お目々もクリクリでめちゃくちゃかわいらしい方」と好印象を語りました。
公選法抵触の可能性がある商品券配布公約
立花氏は出馬理由として「田久保さんの周囲から、伊東市のいわゆる利権構造を破壊してほしいという声を多くちょうだいした」と述べました。他の有力候補が2万円の商品券配布を掲げているとして、「全員ではなく、投票に行った人だけ3万円配ろうと思っている」と発言しました。
しかし、投票への見返りとしての金品配布は公職選挙法221条で禁止されている買収行為にあたる可能性があります。公選法は投票への直接的な対価として金銭や物品を提供することを厳格に禁じており、選挙の公正性を著しく損なう行為として刑事罰の対象となります。
有権者の反応は様々です。
「田久保さんを観光大使にするって発想が面白いけど、市民としてはどうなんだろう」
「商品券配布なんて明らかに買収でしょ。こんな公約を堂々と言うなんて信じられない」
「話題性はあるかもしれないけど、真面目に市政を考えてほしい」
「立花さんの狙いは分かるけど、伊東市民が迷惑するのでは」
「流行語大賞の話題を選挙に利用するのはどうかと思う」
立花氏の一連の選挙戦略と問題行動
立花氏は2025年に入って各地の選挙に立候補を繰り返しており、7月の参院選兵庫選挙区、6月の兵庫県三木市長選、3月の千葉県知事選などにそれぞれ出馬し、いずれも落選しています。特に兵庫県知事選では「当選を目指さない」と明言し、斎藤元彦知事を応援する目的で立候補するという異例の選挙戦を展開しました。
今回の伊東市長選でも、立花氏は10月31日の記者会見で「当選を目的としないでやるんだったらやろうと思っている」と述べていましたが、11月4日には方針を転換し「当選を目指して立候補する」と表明しました。
このような「本人の当選を目的としない立候補」について、専門家からは公選法違反の可能性が指摘されています。選挙プランナーの三浦博史氏は朝日新聞の取材で「本人の当選を目的としない立候補は認めない旨を公選法に明記すべきだ」との見解を示しています。
混戦必至の伊東市長選
今回の市長選は田久保氏の失職に伴い実施されるもので、5月の市長選で田久保氏に敗れた小野達也元市長らが出馬表明しているほか、田久保氏自身も出馬を示唆しており、6人以上の候補者が参戦する混戦になる公算が大きくなっています。
立花氏は学歴詐称問題について「公選法に抵触する可能性は低い」との見方を示していますが、選挙の争点は市政の正常化と信頼回復になるとみられます。有権者からは「もう混乱はうんざり」「普通の市政運営を望む」といった声も聞かれ、話題性重視の選挙戦略に対する批判も予想されます。
また立花氏は11月9日、竹内英明元兵庫県議に対する虚偽情報拡散により名誉毀損容疑で兵庫県警に逮捕されており、逮捕された状態での選挙戦となる可能性もあります。公職選挙法は逮捕者の立候補を禁じていませんが、有権者の判断に大きな影響を与えることは確実です。
伊東市長選は地方自治の根幹に関わる重要な選挙であり、話題性やパフォーマンスではなく、市民生活の向上に向けた真摯な政策論争が求められています。有権者には冷静な判断が期待される一方、立花氏の一連の言動が選挙制度や地方自治に与える影響について、今後も注視が必要です。