2025-09-30 コメント投稿する ▼
川口市議会が外国人無保険・無免許事故で意見書可決 差別批判と安全確保の論点
川口市内で近年、無免許運転、ひき逃げ、飲酒運転に加えて自賠責保険未加入(無保険)事故が相次いでおり、被害者救済の枠組み強化を国に求める内容だ。 反対派は「外国人差別につながる」と主張した。 反対派は、政策課題を外国人という「属性」で枠づけることが差別的表現につながるとの懸念を示した。 外国人の無保険運転が被害者を泣き寝入りさせる構図は看過できない」と主張した。
川口市議会、外国人無免許・無保険事故で国への意見書可決
埼玉県川口市議会は2025年9月30日、外国人による交通事故を巡る意見書を賛成多数で可決した。市内で近年、無免許運転、ひき逃げ、飲酒運転に加えて自賠責保険未加入(無保険)事故が相次いでおり、被害者救済の枠組み強化を国に求める内容だ。自治体議会がこうした対象を限定した意見書を可決するのは異例である。
意見書は、安全指導の強化、無免許・無保険・飲酒運転の厳格な取り締まり、被害者救済制度の拡充などを国に要望する。現行制度では、自賠責保険未加入事故の被害者は自動車損害賠償保障法に基づく補償を受けられるが、それだけでは十分とは言えないとの指摘を含む。
同じ日に、出入国在留管理庁の「不法滞在者ゼロプラン」の確実な実施を求める意見書も可決された。これらは自民党市議の提案で、議長を除く38人中32人が賛成。反対は立憲民主党系会派2人と共産党会派4人、計6人だった。反対派は「外国人差別につながる」と主張した。
反対派の主張と賛成派反論
反対を主導した立憲民主党系議員の今田真美氏は、意見書が「特定の人々を不当に悪者扱いする」「事実に基づかない偏見を拡散する」と批判した。反対派は、政策課題を外国人という「属性」で枠づけることが差別的表現につながるとの懸念を示した。
一方、賛成派である自民党の松浦洋之氏は、過去の無免許ひき逃げ事故を例示。たとえば、2024年9月にトルコ国籍のクルド人少年(当時18歳)が無免許運転で2人を死傷させながら逃走した事故を引用し、加害者の責任追及と被害者救済の重要性を強調した。また、24年9月にはトルコ国籍の女性(38歳)が無免許で事故を起こした事案も挙げ、「多くの日本人は任意保険にも加入する。外国人の無保険運転が被害者を泣き寝入りさせる構図は看過できない」と主張した。
このほか、日本維新の会議員は、外国人ドライバーが母国と日本で交通ルールや運転習慣に差異がある点を指摘し、制度設計における外国人向け支援の欠如を問題視した。制度の未整備が差異理解を欠いた運転につながるとの見方を示した。
「保険に入らないまま運転するのは無責任すぎる」
「事故の被害者が救済されないのは理不尽だ」
「外国人だからではなく法を守らない人が問題」
「差別だと批判するだけでは解決にならない」
「市民の安全を守るのが議会の役割だと思う」
賛成側は、反対派が「差別」「偏見」を理由に声をあげること自体が議論の基点を隠蔽し、市民の安全と被害者救済という課題を軽視することにつながるとの反論も展開した。
意見書の位置づけと課題
地方議会でこうした外国人限定の意見書を採択するのは稀である。意見書は法的拘束力を持たず、国がこれを受けて立法・制度改正を行うかどうかにかかっている。
制度面では、無保険運転事故の被害者補償には限界がある。自賠責保険と同等の補償を超える部分については別枠措置を設ける必要性が指摘されてきた。さらに、事故者の国籍・滞在資格を問う形で政策を議論すると、憲法上の平等原則や外国人の在留権との整合性が問われる。
地方行政レベルでは、地域の外国人住民との関係維持や、外国人福祉政策とのバランスも重要な課題になる。外国人住民にも交通安全教育や運転支援等を提供する仕組みが不可欠との指摘もある。
また、発信された意見書文言が過度にステレオタイプや民族的言及を含む場合、社会的な摩擦を深めるリスクも否定できない。
論点と今後
この意見書は、地方自治体が国に責任を迫る手段としての新たな方向を示したとも言える。だが、政策効果を持たせるには国会段階での法改正や予算措置が不可欠だ。
また、反対派の主張は差別抑止の理念に根ざすが、被害者救済という観点では妥協点の提示が望ましい。外国人の運転マナー改善や保険加入義務化、情報普及強化とあわせて、差別感情を抑える手法設計が今後の鍵になる。
最終的には、国と地方が協調して「属性を問わず法令遵守を徹底させる」枠組みを整備することが求められる。川口市議会の動きは、他の自治体にも波及する可能性がある。