2025-12-05 コメント: 1件 ▼
玉木雄一郎が反対する高校生扶養控除縮小案──無償化と矛盾する増税
まず、子育て支援の根幹にあるべき「育児世帯の税負担軽減」という趣旨が、控除縮小で逆行する可能性がある点だ。 報道によれば、与党は所得税控除額を25万円、住民税を12万円とする改定案を軸に検討を進めており、法改正や予算案に反映させる可能性がある。 * 高校無償化と扶養控除縮小の“整合性”:支援の目的は揃っているのか。
高校生の扶養控除縮小検討──玉木雄一郎氏が即時反対の構え
2025年12月4日、政府と与党は「高校生の扶養控除を大幅に縮小する方向で検討に入った」と報じられた。現在、子どもが高校生である世帯では、所得税で年間38万円、住民税で年間33万円という扶養控除が認められている。だが、児童手当の拡充や高校の無償化を受け、与党内には「控除は過大」という見直し論が浮上。所得税の控除額を25万円、住民税を12万円とする案が軸とされる。
これに対し、玉木雄一郎氏(国民民主党)は、ツイートでこう断じた。
高校生の子ども1人あたり所得税38万円、住民税33万円の控除がなくなると、大きな負担増になる。高校無償化の財源として扶養控除を縮小したら意味がないではないか。」
玉木氏の主張は端的だ。子育て支援の有名政策――高校無償化――を語るなら、同時に家庭の税負担を重くするような税制変更を行うべきではない、というものだ。
控除縮小の議論とその不整合
なぜ今、扶養控除縮小の議論が浮上したのか。背景には、2024年から高校生までを対象に拡大された児童手当と、2026年度から予定される私立高校も含めた実質無償化の制度変更がある。政府・与党はこれらを総合した子育て支援パッケージと位置づける中で、高校生の保護者に対する税制上の優遇措置──扶養控除──が「二重優遇になっている」と考える向きがある。
さらに、扶養控除は所得が高いほど減税額が大きくなるため、「高所得者が最も恩恵を受ける」といった批判が根強い。要するに、所得控除の見直しを「公平性」「財政再分配」の観点から正当化しようという狙いがある。
しかしこのロジックには大きな矛盾がある。まず、子育て支援の根幹にあるべき「育児世帯の税負担軽減」という趣旨が、控除縮小で逆行する可能性がある点だ。特に教育費の負担感や生活費の高騰に苦しむ世帯では、手取りの減少は生活の重みを増す。しかも無償化の恩恵は「授業料の軽減」だけであり、生活費や教材費、通学費、教材以外の出費は残る。
また、税制度の見直しを「高所得者優遇の是正」とするなら、そもそも控除の縮小ではなく、所得制限付きの給付制度への転換や、控除対象の見直し、あるいは逆進性を避ける別の形での支援が現実的だった可能性が高い。控除削減という手段を採ること自体が、「子育て支援」と「再分配」の両立を放棄したものと見る向きもある。
玉木氏の主張は理にかなっている
玉木雄一郎氏の反対姿勢は、こうした矛盾を正しく指摘している。高校無償化の×印の財源確保を理由に、子育て世帯の税負担を増やす──。これでは支援策としての一貫性が損なわれる。
さらに、家庭環境や所得状況で受け止め方が大きく異なる税制変更を、議論不足のまま押し通すことは、政治の公平性や社会的信頼を揺るがしかねない。特に、中低所得層の家庭ほど、控除縮小による減税幅の縮小が実感されやすく、かえって格差拡大につながる可能性がある。
現に過去の税制見直しでも、扶養控除縮小や廃止を機に「子育て世帯への支援が後退した」との批判が上がってきた。控除削減ありきではなく、まずは「誰に」「どんな形で」「どれだけの支援を届けるか」を原点から議論すべきだ。
政策スケジュールと今後の争点
報道によれば、与党は所得税控除額を25万円、住民税を12万円とする改定案を軸に検討を進めており、法改正や予算案に反映させる可能性がある。だが、税制は家計に直結する敏感なテーマであり、世論の反発や野党の追及は避けられない。
争点となるのは主に次の点だ。
* 高校無償化と扶養控除縮小の“整合性”:支援の目的は揃っているのか。
* 低・中所得世帯への配慮のあり方:控除縮小が逆進性を強めないか。
* 財源論の妥当性:本当に控除縮小が必要か。別の財源(高所得層、法人税、資産課税など)では代替できないか。
* 制度の透明性と公平性:制度変更の議論過程が公開されているか。
控除縮小は筋違いの政策だ
子育て支援や教育の機会均等をうたうなら、税制においても世帯の経済的負担を減らすことこそが本筋だ。高校無償化と扶養控除縮小を併せて実施するのは、支援とは言えず、単に家庭の財布を狙った“増税の裏口”である。
特に、所得の低い世帯ほど将来に不安を抱える今の時代において、控除縮小は適切ではない。社会の公平と持続可能な成長を考えるなら、まずは高所得者や大企業に応分の負担を求めるなど、別の手段で財源を確保すべきだ。
玉木雄一郎氏の姿勢は、子育て世帯や働く市民の目線に立った正当な主張だ。政府・与党には、この声を軽視せず、制度変更の前に慎重な議論と国民との丁寧な説明を求めたい。