2025-10-26 コメント: 1件 ▼
村井嘉浩氏ハンカチで涙「苦しかった」宮城知事選で6選、参政党と保守分裂の激戦
「苦しかった」と述べた村井氏の言葉に、今回の選挙がいかに厳しい戦いであったかが凝縮されている。 選挙戦が進むにつれ、村井氏は厳しい現実に直面させられた。 村井氏は選挙戦を振り返り、「皆が頑張ってくれたおかげで、選挙事務所の空気が変わった」と述べ、支援者や組織の奮闘に感謝した。 だが、選挙戦の過程で村井氏が経験した風当たりは、過去に例を見ないほど厳しかった。
苦しい選挙戦を経て、6選達成-村井氏がハンカチで涙
2025年10月26日投開票の宮城県知事選挙は、現職・村井嘉浩氏(65)が340,190票を獲得し、県政史上最多となる6度目の当選を確実にした。当選確実の報が伝わると、仙台市青葉区の事務所に集まった支持者約100人から歓声が上がり、村井氏は何度もハンカチで涙をぬぐった。「苦しかった」と述べた村井氏の言葉に、今回の選挙がいかに厳しい戦いであったかが凝縮されている。県議時代を含めると9回連続の当選となり、全国知事会会長として今秋まで抜群の発信力を見せてきた村井氏。いまや「宮城の顔」というべき存在だが、この選挙で有権者の厳しい反応に直面させられた。
村井氏が出馬を決断したのは7月末のことだった。当初、氏は出馬を迷い、支援者と何度も話し合いの時を重ねた。その決断を後押ししたのは妻の一美さんだった。妻に背中を押され、村井氏は6選を目指す出馬を決意した。だが、その後の選挙戦は当初から困難に直面することになった。選挙戦は保守陣営の分裂で展開されたのだ。村井氏には自民党総裁で10月21日に首相に就任した高市早苗首相が応援メッセージを送った。一方、元参院議員で新人の和田政宗氏(51)には安倍晋三元首相の妻・安倍昭恵さんがビデオメッセージで支援を表明し、亡き夫をも交えた支援の声を届けた。「主人も信頼していた先生で、ぜひご当選をいただきたい」という昭恵さんの言葉は、安倍派との結びつきの深さを示していた。
マスコミ調査では一時的に劣勢、最終盤で形勢が逆転
選挙戦が進むにつれ、村井氏は厳しい現実に直面させられた。各報道機関の世論調査では、一時的に和田政宗氏が優勢という結果が伝えられた。村井氏はこの状況を受け、敗戦の言葉まで心の準備をしていたという。だが、選挙戦の最終盤に形勢が変わった。村井氏は選挙戦を振り返り、「皆が頑張ってくれたおかげで、選挙事務所の空気が変わった」と述べ、支援者や組織の奮闘に感謝した。出身母体である自民党の宮城県議団がフル回転し、激しい組織投票活動を展開したことが、薄氷の勝利をもたらしたのだ。
だが、選挙戦の過程で村井氏が経験した風当たりは、過去に例を見ないほど厳しかった。交流サイト(SNS)上では、村井氏に対する誹謗中傷が拡散され、根拠のない偽情報が流れた。村井氏が実際には掲げていない政策、例えば「宮城県をザンビアのホームタウンに」や「メガソーラー大歓迎」といった虚偽の主張が氏の名義で拡散されたのだ。こうしたデマへの対抗として、村井氏は法的措置の検討をも余儀なくされた。街頭演説ではやじが飛び交い、一部の会場では混乱に陥った。このような異常事態の中で、村井氏は選挙運動を進めなければならなかったのだ。
物価高や子育て支援で支持を集めた和田氏、参政党も4度宮城入り
和田政宗氏は、物価高への対策と子育て支援の充実を主な訴点として支持層を広げていった。参政党の神谷宗幣代表も選挙期間中に4度にわたって宮城県入りし、和田氏の応援に当たった。参政党は水道民営化問題など村井県政に対する政策的な対抗軸を鮮明にしながら、県政の刷新を掲げて支援活動を展開した。村井氏が「参政党と戦っているような感じもした」と述べるほど、参政党の支援体制は強固であった。期日前投票では新人候補の優勢が報じられ、村井氏にとって相当なプレッシャーになったと考えられる。
結果として村井氏が約16,000票の差で和田氏を抑え、6選を勝ち取った形となったが、この数字は村井氏が受けたダメージの大きさを物語っている。前回の知事選での当選差がどの程度であったかによって評価は異なるが、現職知事が20年の県政実績を背景にしながら、新人候補に追い詰められるという事態は、通常の地方選挙では考え難いシナリオだ。
「ワンマン批判も受け止め、県民に寄り添った4年間へ」と決意
当選後、村井氏は支援者の前で総括の言葉を述べた。「20年間やってきたことは間違っていなかった。村井県政の集大成をやっていいという評価をもらった」と述べ、過去の県政運営に対する確信を示した。だが同時に、村井氏は謙虚な姿勢も忘れていない。「今はノーサイド。ワンマンという批判も受け止め、県民に寄り添った4年間にしたい」と述べ、今後の県政運営への決意を新たにした。ワンマン経営との批判や県民からの厳しい声を受け止め、次期任期では対話と共感を重視した県政へと軌道修正していく方針を示唆している。
村井氏のハンカチで涙をぬぐう姿は、6選達成の喜びだけでなく、激しい選挙戦を経て初めて自らの県政運営への課題を強く認識させられた瞬間でもあったと考えられる。今後の宮城県政は、この選挙戦での教訓をどう生かすのかが問われることになるだろう。