ツキノワグマ管理方針を奈良県が転換 保護から殺処分含む対応へ 10月施行目指す

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ツキノワグマ管理方針を奈良県が転換 保護から殺処分含む対応へ 10月施行目指す

ツキノワグマ方針転換へ 奈良県が「保護から管理」へ舵 10月施行目指す


奈良県は、県内で相次ぐツキノワグマの目撃情報と生息域の拡大を受け、「保護重視」から「管理重視」へと方針を大きく転換することを決定した。10月からの施行を目指して、保護管理計画の改定案を公表し、今後パブリックコメントを通じた意見募集を行う。

対象となるのは、奈良・三重・和歌山の3県にまたがる森林に生息する「紀伊半島のツキノワグマ」。この地域固有の遺伝子を持ち、かつては絶滅の危機に瀕していたことから、環境省のレッドリストにも「絶滅のおそれのある地域個体群」として記載されていた。平成4年の調査ではわずか150頭程度とされていた個体数が、令和6年度には395~560頭にまで回復したと推定されている。

だが、その一方で人里への出没は年々増加。5年度は58件だった目撃情報が、6年度には145件に急増。今年5月以降も、天理市、山添村、奈良市の東部山間地域などで立て続けに目撃されており、「吉野川以南」とされていた生息域が確実に北上している。

「昔は山奥の話だったのに、今は家のすぐそば。命の危険を感じる」
「保護も大事だけど、人間の生活が最優先されるべき」


「学習放獣」から「出没場所での対応」へ


これまで奈良県は、捕獲したクマに対して「学習放獣」という対応を取ってきた。人里で捕獲したクマに恐怖体験を与え、「人間に近づくと危険だ」と学ばせた上で、山奥に戻す手法だ。しかし、こうした取り組みにも限界が見え始めている。

新たな管理計画では、出没場所を「集落ゾーン」「集落周辺ゾーン」「森林ゾーン」の3つに区分。最も人間活動が活発な「集落ゾーン」では、原則として殺処分とする方針を明確に示した。「集落周辺ゾーン」では1回目は学習放獣とし、2回目以降の出没では殺処分の対象にする。「森林ゾーン」では、引き続き殺処分は原則行わない。総捕獲数は、生息数の8%以内に抑えるとしている。

この方針は、「希少種の保護」と「住民の安全確保」という二律背反の問題に対して、一定の線引きを設けたものだ。

「殺すしかないの?って思うけど、現実には毎日山のふもとで暮らしてる人もいる」
「都市部からは“可哀想”って声が出るけど、命のやり取りしてるのはこっち」


命と生活をどう守るか 住民の不安が背景に


今回の方針転換の背景には、明確な住民の声がある。県農業水産振興課の担当者は「これだけ目撃情報が増え、『怖いからなんとかしてくれ』という切実な声が寄せられた」と語っている。特に農地や通学路、住宅近くでクマと遭遇する危険性が現実味を帯びており、県としては安全確保を最優先せざるを得なかった。

一方で、保護団体や一部の環境保護活動家からは、殺処分方針に対する反発の声もある。人里への出没は人間側の開発や山林の変化が原因ではないか、そもそも人間とクマの共生の道を閉ざすことになるのではないか、との批判だ。

しかし、行政にとって優先順位は明確だ。「子どもが登校中に襲われた」「農家が収穫中に出くわした」という事態が現実に起これば、県民の信頼を損なうのは明白である。こうした緊張関係のなかで、現実的な対応策を模索した結果が今回の改定案に反映されている。

保護一辺倒から脱却を 環境政策の現実対応とは


ツキノワグマのように、長年にわたって保護対象とされてきた野生動物に対し、管理や間引きといった「現場重視」の視点を導入することは、今後の環境行政の大きな課題でもある。

自然を守ることと、人の暮らしを守ることは、本来どちらも等しく重要である。しかし、現場で命の危険に晒されている住民からすれば、抽象的な「生態系保全」よりも、明日を安心して生きられる具体的な対策の方が切実だ。

その意味で、今回の奈良県の方針転換は、「現場の声」と「科学的知見」の折り合いを模索する一つの転機となるだろう。人間と野生動物の関係を見直す時代に入っている。安全と共生、そのバランスをどう保つか。今後も全国的な議論が求められる。

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2025-06-25 09:47:11(植村)

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