2025-06-10 コメント投稿する ▼
立憲民主党、衆院解散に「10日前通知」義務化法案を提出 恣意的運用に歯止め
解散の「抜き打ち」防げるか 立憲が新法案提出
立憲民主党は6月10日、内閣による恣意的な衆議院解散を抑制することを目的に、解散予定日の10日前までに国会への通知を義務づける法案を衆議院に提出した。あわせて、解散に関する質疑の実施や選挙管理委員会への事前意見聴取を求める規定も盛り込まれており、選挙の透明性と正当性を担保する狙いがある。
法案を提出したのは立憲の谷田川元衆院議員で、記者団に対し、
解散することを衆議院にしっかり通知し、国会審議を通じて解散の妥当性や選挙の争点を国民の前に明らかにしたい
と語り、過去の“突如解散”に対する強い問題意識をにじませた。
現行の憲法では、内閣が衆議院を解散する際に事前通知の義務はなく、総理大臣の判断で即日解散が可能とされている。そのため、野党側からは「選挙準備が不十分な状態での解散が繰り返されてきた」として制度の見直しを求める声が強まっていた。
「10日前通知+本会議質疑」で透明性確保を
法案の中核は、衆院解散に際して、内閣がその予定日を少なくとも10日前までに通知するという点だ。ただ通知するだけでなく、その理由を明記することが義務づけられる。また通知を受けた衆議院は、本会議などで首相や閣僚に対して質疑を行えるようになり、解散の正当性を政治的に審査する機会が生まれる。
さらに、内閣は選挙管理委員会からの意見聴取を義務づけられ、選挙運営の円滑化という実務的な側面でも制度の補強を図る。
これにより、従来のように「今日解散」「明日から選挙準備」という唐突な展開を抑制し、政党・候補者・有権者それぞれにとっての予見可能性を高めることが期待されている。
「これまでの“電撃解散”の慣行は、もはや古い。立法によるけじめは必要だ」
「10日前通知で、国民にも構えができる。何に対して投票するのかを考えられる」
「本当に争点を明確にしたいなら、審議と質疑を設けるのは当然」
「野党だけの問題じゃない。与党もまともな準備ができる制度がいる」
「この法案、選挙制度の正常化への第一歩だと思う」
「解散権の制限」に慎重論も
一方で、このような立法措置による「解散権への制限」に対しては、憲法との整合性や政権の機動性とのバランスを疑問視する声もある。特に自民党内では、「内閣の専権事項を法律で縛ることは憲法に抵触しかねない」とする意見も根強い。
これまでの政権運営では、衆院解散は政権側の「最大のカード」とされてきた。例えば支持率の回復局面や野党の混乱期に合わせた戦略的な解散がしばしば行われ、その是非が後から問われることも少なくなかった。
立憲の法案はその慣例に一石を投じるものであり、「戦略的解散」が封じられることで、与党側にとっては政局運営上の制約となる可能性がある。
立候補年齢引き下げ法案も併せて提出
立憲民主党はこの日、もう一つの選挙制度改革案として、「被選挙権年齢の引き下げ」法案も提出した。具体的には、以下のように改正を提案している。
* 衆議院議員および地方議会議員:18歳以上に引き下げ
* 参議院議員、都道府県知事、市町村長:23歳以上に引き下げ(現行は30歳)
背景には、選挙権年齢が既に18歳に引き下げられている中で、被選挙権との“年齢ギャップ”が存在している点がある。若年層の政治参加を促すためには、候補者としての門戸を広げることが重要だとする主張だ。
若者の政治離れが叫ばれる中、この法案は「言うだけではなく、立候補の機会を保障する」という具体策として注目されている。
“手続きの整備”か“政治戦略の制限”か 国会での攻防へ
立憲民主党が提出した今回の一連の法案は、衆院解散の手続きを制度的に整備する一方で、政権側の政治的自由度を縛る可能性もはらんでいる。今後の国会審議では、憲法との整合性、制度の現実性、政局との関係性をめぐって与野党間で激しい議論が予想される。
立憲側は、「政党の準備と国民の判断を尊重する制度」として位置づけているが、自民党など与党側からは「解散権は内閣の専権事項。手続きに縛られるべきでない」とする反論が予想され、成立には高いハードルがあるのが実情だ。
それでも、政治の透明性と予見性を求める声が強まる中、今回の法案提出は、今後の解散制度や選挙制度のあり方を見直す契機となる可能性がある。問題提起としての意義は小さくなく、引き続き国会内外での議論が注目される。