2025-10-15 コメント: 1件 ▼
反軍演説の議事録復活を立憲提案も自民は持ち帰り 戦時中削除の斎藤隆夫氏演説85年ぶり復活なるか
戦時中に削除された反軍演説の議事録復活を巡り、国会で新たな動きが出ています。 2025年10月15日、立憲民主党が衆院議院運営委員会理事会で議事録復活を正式に提案しましたが、自民党は時間がかかるとして持ち帰りました。 石破氏は2025年10月10日に発表した戦後80年所感で反軍演説に言及し、当時の議会は軍に対するチェック機能を果たしていたとは全く言い難い状況だったと指摘しました。
85年ぶりの歴史的提案
1940年2月2日、立憲民政党の斎藤隆夫元衆院議員氏は帝国議会で日中戦争を批判する演説を行いました。現実を無視し、聖戦の美名に隠れて国民的犠牲を閑却すると軍部や政府を糾弾したこの演説は、軍部の猛反発を招きました。
当時の小山松寿衆院議長氏は職権で速記録から演説の後半、全体の約3分の2にあたる約1万字を削除しました。斎藤氏はその後、3月7日に衆議院から除名処分を受けています。
「戦時中に削除された議事録を復活させるなんて、今こそやるべきだ」
「権力に屈せず本当のことを言った議員を、歴史に残さないのはおかしい」
立憲民主党の青柳陽一郎野党筆頭理事氏は理事会後、記者団に対し、演説をちゃんとした議事録として歴史的に検証できる形で残すのは有意義なことだと強調しました。
石破氏の強い思い入れ
この提案の背景には、石破茂首相氏の強い思い入れがあります。石破氏は2025年10月10日に発表した戦後80年所感で反軍演説に言及し、当時の議会は軍に対するチェック機能を果たしていたとは全く言い難い状況だったと指摘しました。
いまだに削除されたままなんて、日本の議会にとってあっていいことじゃない
石破氏は2018年7月に兵庫県豊岡市にある斎藤氏の記念館を訪問しています。2025年1月の会合では、権力に屈せず本当のことを言わないと国は傾くと語り、斎藤氏への敬意を示していました。
10月1日には自民党の森山裕幹事長氏に与野党協議を行うよう指示し、議事録復活に向けた調整に入っていました。首相周辺は、これは首相肝煎り案件だと説明しています。
前例のない試み
衆院事務局によると、不適切発言などを理由に国会の議事録から削除された部分を元に戻した前例はありません。議事録の復活には全会派の賛同が必要とされ、議長の諮問機関である議会制度協議会で協議されることになります。
立憲民主党の長妻昭前代表代行氏は以前から議事録の復活を主張しており、社民党の福島瑞穂党首氏らも賛同しています。野党側は総じて前向きな姿勢を示しています。
しかし自民党内には慎重論があります。15日の理事会で自民党は時間がかかるとして即答を避け、党内調整のために持ち帰りました。保守派を中心に、戦時中の議事録を今さら復活させる必要があるのかとの声も根強くあります。
文民統制の重要性
石破氏の戦後80年所感は、なぜあの戦争を避けることができなかったのかという問いに焦点を当てています。文民統制の原則が制度上存在しなかった大日本帝国憲法の問題や、軍部による統帥権の拡大解釈、議会やメディアが軍のブレーキ役にならなかったことなどを列記しました。
所感では、精神的・情緒的な判断が重視され、国の進むべき針路を誤った歴史を繰り返してはならないと強調しています。過去を直視する勇気と誠実さ、寛容さを持った本来のリベラリズム、健全で強靱な民主主義が何よりも大切だと述べました。
過去の失敗から学ばないと、また同じ過ちを繰り返す
反軍演説の議事録復活は、単なる歴史的記録の修正にとどまらず、現代の民主主義と文民統制のあり方を問い直す試みといえます。議会が権力の暴走をチェックする機能を果たせなかった反省を、どう現代に生かすかが問われています。
立憲民主党など野党側は戦後80年の節目に議事録を復活させることで、言論の自由と議会制民主主義の重要性を再確認したい考えです。一方、自民党内の調整には時間がかかる見通しで、早期実現は不透明な情勢となっています。
臨時国会での議論の行方が注目されます。