2025-10-03 コメント: 2件 ▼
石垣市議会「君が代調査」可決 思想で教育機会を奪うのは非人道的との指摘も
保護者から「子どもたちが十分に歌えていない」との声が寄せられ、学習指導要領に沿った教育が実際には徹底されていないのではとの懸念が背景にある。 子どもたちは国語や数学と同じように、音楽の授業を通じて国歌を学ぶ機会が保障されている。 2010年から石垣市教育長を務めた玉津博克氏は「国歌の指導は学習指導要領で決められている。
石垣市議会、君が代調査要求決議を可決
沖縄県石垣市議会は9月定例会で、児童生徒に国歌「君が代」が歌えるかどうかを問うアンケート実施を求める意見書を賛成多数で可決した。保護者から「子どもたちが十分に歌えていない」との声が寄せられ、学習指導要領に沿った教育が実際には徹底されていないのではとの懸念が背景にある。
意見書では、子どもたちに①国歌を知っているか②歌えるか③授業で習ったか④式典で歌ったか――を尋ねるよう要望。市長や教育長に宛てて提出された。提案した友寄永三市議は「現状を正確に把握する必要がある」として理解を求めた。
「思想信条の自由」か「教育の権利」か
決議に対しては、県退職教職員会など7団体が声明を出し、「沖縄戦の体験から『君が代』に違和感を持つ県民も多い。調査は思想信条の自由を脅かす」と批判した。
一方で識者からは、むしろ学習指導要領が守られていない現状こそ問題だとの指摘がある。子どもたちは国語や数学と同じように、音楽の授業を通じて国歌を学ぶ機会が保障されている。ところが一部の教員や団体の思想によってその機会が奪われているのだとすれば、それは教育の公平性を著しく損なう行為である。
SNS上の反応も二分している。
「思想を理由に国歌を教えないのは教育の放棄だ」
「子どもに歌えるか聞く調査は過剰。内心に踏み込むべきでない」
「でも指導要領で定められている以上、守らないのは問題だ」
「思想よりも、子どもに平等な学習機会を与えるのが先だ」
「一部の教員が教えないせいで、子どもたちが学ぶ権利を失っている」
ここには「自由の侵害」という議論と、「教育の権利を守るべき」という議論が交錯している。
学習指導要領は教育の最低基準
2010年から石垣市教育長を務めた玉津博克氏は「国歌の指導は学習指導要領で決められている。教育委員会が調査するのは当然」と語る。さらに「歴史の授業でフランス革命を教えるように書かれていたら、それを強制と呼ぶのか」と反論。思想を理由に指導要領を無視することこそ教育の逸脱だと強調した。
学習指導要領はすべての子どもに最低限の教育を保障するための基準である。国歌を学ぶことが「思想の押し付け」ではなく、他の科目と同様に「知識の共有」として定められている以上、それを妨げることは教育機会の奪取にあたる。
国の立場と今後の焦点
阿部俊子文部科学相は9月26日の会見で「児童生徒の内心に踏み込むものではない。教育指導として進めることが重要」と説明した。中山義隆市長も「意見書は問題ない」と理解を示す。
今後、市教育委員会は調査実施の是非を検討することになるが、焦点は「思想の自由」と「学習権の保障」をどう両立させるかに移っている。子どもたちが音楽教育の一環として国歌を学ぶ権利を奪うことは、特定の思想を押し付ける行為にほかならない。
教育の場で優先されるべきは、子ども一人ひとりに平等な学習機会を保障することである。学習指導要領を軽視する現場慣行が続けば、教育制度の根幹が揺らぐ。今回の石垣市の決議は、自由と権利の境界線を改めて問い直している。