2025-12-16 コメント投稿する ▼
金融庁がビッグモーター問題受け「車値引き」を保険業法違反と明記
旧ビッグモーターによる保険金不正請求問題で明らかになった「保険加入を条件に中古車の価格を値引く」行為が、保険業法で禁止されている「特別利益の提供」に該当することが確認されたことを受け、金融庁が保険代理店規制の厳格化に乗り出します。
旧ビッグモーターによる保険金不正請求問題で明らかになった「保険加入を条件に中古車の価格を値引く」行為が、保険業法で禁止されている「特別利益の提供」に該当することが確認されたことを受け、金融庁が保険代理店規制の厳格化に乗り出します。2025年12月16日に判明した監督指針改正案の原案では、こうした行為を明確に違法と位置づけ、業界の抜本的改革を迫る内容となっています。
ビッグモーター問題が浮き彫りにした構造的課題
金融庁の立ち入り検査で、極めて短時間で手続きしていた契約148件を抽出し調べたところ、8割を超える122件で重要事項を説明していなかったという実態が明らかになりました。さらに深刻だったのは、保険加入を条件に車両価格を割り引くといった、保険業法で禁止されている「特別利益の提供」を行ったケースが確認されたことです。
金融庁は2023年11月30日付でビッグモーターの損害保険代理店登録を取り消す処分を決定しました。これは金融監督庁(現金融庁)発足以来初めての最も重い処分でした。この処分は、単なる個別企業の問題にとどまらず、保険代理店業界全体が抱える構造的な課題を浮き彫りにしたのです。
監督指針改正で「車値引き」を明文禁止
今回の監督指針改正案では、特定の保険に加入することを条件に代理店が車両価格を値引きする行為を、保険業法が禁じた「特別の利益の提供」に当たると明記することになります。これまで解釈に曖昧さが残っていた部分を、具体例として監督指針に明示することで、サービスの公平性確保を図る狙いがあります。
代理店判断による推奨商品販売が禁止されると、大規模自動車販売店が慣習的に導入している「テリトリー制」が展開できなくなる可能性があります。テリトリー制は、自動車販売店などの大規模乗合保険代理店が、損保各社を競わせ、各店舗で取り扱う損保会社を事実上1社に絞る慣習でした。
大規模代理店への上乗せ規制も強化
監督指針案では、代理店の都合で特定保険会社の商品を推奨しないよう、顧客の意向を重視して商品の推奨理由などを説明するよう求めています。さらに、年間20億円以上の手数料収入がある大規模代理店に対しては、「法令順守責任者」の設置も義務付けます。上位100社が対象になる見通しで、重点的に監視する方針です。
業界構造の根本的転換を促す
改正保険業法では、約100社のうち中古車ディーラーなど保険販売以外の業務を兼ねる兼業代理店には規制を上乗せします。保険金の水増し請求が起きた場合に、金融庁が保険業法を根拠に代理店に業務改善命令などの行政処分を出せるようになります。
これらの規制強化は、保険代理店業界における顧客本位の業務運営を徹底し、健全な競争環境を実現することを目的としています。特に、兼業代理店が本業の都合で保険販売を歪める構造を根本的に改める狙いがあります。
今後の業界への影響と展望
損保会社に代理店指導・監督などの厳格化も求め、必要に応じて報告徴求を命じたり、行政処分を科したりします。これにより、保険会社側にも代理店管理の責任がより強く求められることになります。
金融庁は近く改正案を公表し、意見公募を経て正式決定する予定です。この規制強化により、保険代理店業界は顧客本位のサービス提供を前提とした新たなビジネスモデルへの転換が求められることになります。従来の「便宜供与競争」から「サービス品質競争」への構造転換は、業界全体にとって大きな変革の契機となりそうです。