2026-03-26 コメント投稿する ▼
保守・百田代表「ホルムズ海峡交渉で役に立てる」 イランと小説『海賊とよばれた男』で縁
百田代表は、作家としての過去の経験を基盤に、日本の国益を最優先した独自の外交アプローチを提案しており、エネルギー安全保障という日本の生命線に関わる課題に対する、一歩踏み込んだ発言として注目を集めています。
ホルムズ海峡、日本の生命線に迫る危機
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ戦略的な海峡であり、世界の海上輸送、特にエネルギー資源の輸送において極めて重要な位置を占めています。日本のエネルギー輸入の約9割、その多くを占める原油の多くがこの海峡を通過しており、日本の経済活動と国民生活の維持に不可欠なシーレーン(海上交通路)となっています。
近年、この地域ではイランとイスラエルをはじめとする周辺国との地政学的な緊張が断続的に高まっており、ホルムズ海峡周辺での有事や航行妨害が発生した場合、日本のエネルギー供給は深刻な影響を受ける可能性があります。こうした状況は、日本の経済、産業、そして国民生活の安定に直結する喫緊の課題として、政府・与党内でも長年、警戒が続けられてきました。
作家・百田尚樹氏、独自の外交アプローチ
今回の百田代表の発言の背景には、彼が作家として築き上げてきた、イランとの特別な繋がりがあります。百田氏は2012年、出光興産の創業者である出光佐三氏の人生を描き、第二次世界大戦下において、連合国との紛争状態にあったイランから石油を輸入するために困難な交渉と航海を敢行した「日章丸事件」(1953年)を題材とした小説『海賊とよばれた男』を出版しました。
この作品は国内外で高く評価され、その内容がイラン政府の関心を引くことになります。その結果、百田氏は2014年、イラン政府から作家として異例の招待を受け、現地を訪問。当時のイランにおける経済産業分野のトップにあたる人物らとも会談するなど、公式な外交ルートとは異なる、文化・民間交流を通じた接点を持つに至りました。
3月26日の参議院経済産業委員会において、百田代表はこの過去の経験に触れ、現在の緊迫する中東情勢を踏まえ、「交渉して日本のタンカーのホルムズ海峡通過を要請することも選択肢ではないか」と質問しました。そして、「私の力は全くないと思うが、微力ながら役に立てるものなら、ぜひ政府から声を掛けていただきたい」と、自身の持つ人脈や経験を日本の国益のために活用する用意があることを表明したのです。この発言は、3月23日にも自身のX(旧ツイッター)アカウントで「交渉するなら、末席に加わってお手伝いしたい」と述べていた通り、かねてより温めていた考えであると推察されます。
政府の慎重姿勢、「抜け駆け」のリスクと国際協調の狭間
しかし、百田代表の提案に対し、政府側は慎重な姿勢を崩していません。答弁に立った赤沢亮正経済産業相は、「日本はアジアを代表しているので、わが国だけがイランと交渉して、うまくいけばいいのかということについて、よく考えなければいけない」と述べました。
この発言には、いくつかの重要な意味合いが含まれています。第一に、ホルムズ海峡の航行の自由や安全確保は、日本一国だけで解決できる問題ではなく、アメリカ、ヨーロッパ諸国、そして湾岸諸国など、関係国との緊密な連携と協調が不可欠であるという認識です。日本だけが単独でイランと交渉を進める「抜け駆け」とも映りかねない行動は、国際社会における日本の立場を損なうリスクや、関係国との外交摩擦を生む可能性も否定できません。
第二に、日本がアジアの主要国として、国際社会における責任ある役割を果たすべきであるという考え方です。ホルムズ海峡問題への対応は、アジア地域全体の安定にも関わるため、日本が主導的な役割を担いつつも、国際協調の枠組みの中で進めることが求められます。政府としては、国益を最大限に確保しつつも、国際社会との調和を図るという、極めてデリケートな外交政策の舵取りが求められている状況と言えます。
多様化する外交努力と今後の展望
中東情勢の安定化に向けた動きは、百田代表の提案だけにとどまりません。岸田文雄元首相も、このほど議員外交を開始し、「チャンネルを駆使し、解決に汗をかく」として、関係国との対話を通じて情勢沈静化に努める考えを示しています。こうした様々なアクターによる外交努力は、複雑化する国際情勢において、あらゆる可能性を探ろうとする動きの表れと言えるでしょう。
百田代表の提案は、既存の政府間外交とは異なる、民間レベルでの経験や人脈を活かしたユニークなアプローチです。作家としての国際的な知名度や、イランとの過去の個人的な接点が、もし政府によって活用されるのであれば、新たな外交の糸口となる可能性も秘めています。
今後、日本政府がホルムズ海峡問題に対してどのような外交戦略をとるのか、そして百田代表の申し出をどのように評価し、活用していくのか、その動向が注目されます。エネルギー安全保障という国益に直結する課題に対し、多様なアプローチが模索される中で、政府の賢明な判断が期待されます。