小西洋之氏が医療機関7割赤字を指摘「高市インフレ」と政権批判　参院質疑

医療機関7割赤字に「高市インフレ」言及　立憲・小西氏が経営危機訴え

参議院本会議で2025年12月1日、医療法等の一部を改正する法律案の審議が始まり、立憲民主党の小西洋之議員が会派を代表して質問に立った。小西氏は医療機関の経営難について「7割もの赤字が報告される」深刻な状況を訴え、高市政権発足後の物価高騰を「高市インフレ」と批判した。

診療報酬制度の限界露呈

小西氏は質疑で、医療機関の経営が「昨今の物価や賃金の上昇を受け、大変深刻な状況にある」と指摘した。一般病院から大学病院、公立病院まで幅広く、調査によっては7割もの医療機関が赤字という異常事態が報告されている現状を明らかにした。

医療・福祉従事者の賃上げの停滞も深刻で、産業全体の2025年平均賃金改定率が4.4%であるのに対し、医療・福祉分野は2.3%と全産業で最低水準にとどまっている。昨年を下回る状況にすらあることを強調し、医療現場からは「このままでは立ち行かない」との悲鳴が上がっていると窮状を代弁した。

小西氏は診療報酬という公定価格の制約を受ける医療機関について、「アベノミクスの失政による悪い円安等の物価高騰の悪影響を最も不条理に受ける立場にある」と分析した。

「医療現場が安心できる具体的な支援策が必要だ」
「これでは地域医療が崩壊してしまう」
「診療報酬の改定が物価上昇に全く追いついていない」
「医師や看護師の確保すら困難になってきている」
「病院経営が限界に達している状況だ」

「高市インフレ」と厳しく批判

特に注目されたのは、高市政権発足後の物価高騰を「高市インフレ」と名付けて批判したことだ。小西氏は「放漫財政による更なる円安等による物価高騰が進行している」と指摘し、これを「人災」と断じた。

立憲民主党としては、「戦後最大級の医療崩壊の危機」に対して事業運営費と人件費の双方をしっかり支援する経済対策を提言し、年末の診療報酬改善と制度改革の二段階戦略で医療を守り抜く決意を表明した。

厚生労働大臣に対しては、今回の経済対策や補正予算が医療の経営危機を救うに足りるものかを質し、今後進行する物価高騰に対する診療報酬の制度面・内容面の改善方針を求めた。また、薬価の中間年改定見直しについても具体的な方針の提示を要求した。

医療DXと地域医療構想にも言及

質疑では医療提供体制の構築についても幅広く取り上げた。2040年を見据えた新たな地域医療構想の意義と機能について説明を求め、医療計画におけるロジックモデル活用の必要性を強調した。

医療DXの推進については、衆議院で修正された「電子カルテ普及率約100%」の文言を評価しつつ、クラウドネイティブ技術の活用を措置する再修正案を立憲民主党が共同提案したことを明らかにした。

医師偏在対策では、保険料拠出による重点医師確保区域での手当支給制度化について、保険者が意見を述べる仕組みの構築が重要だと指摘した。外科医等の減少については、消化器外科では20年後に現在の半分まで減少する見通しを示し、報酬面での優遇や医療機能の集約など実効性ある対策を求めた。

予防医療への投資を主張

質疑の最後では、2040年に向けた予防医療の推進を強く主張した。小西氏は2014年の厚生労働委員会質疑を振り返り、糖尿病などの生活習慣病対策で科学的根拠に基づく保険料の投資を含めた予防医療推進を早くから提起していたと強調した。

保険料負担軽減のためにも、死亡・重症化を防ぐ予防に医療資源の投資を行うべきだと主張し、受診率向上や精密検査・適正治療の実施により、中長期的な医療費・介護費抑制は可能との見解を示した。

小西氏は質疑を「憲法第13条の個人の尊厳尊重、幸福追求権、第25条の生存権保障等の趣旨を具現化し、かけがえのない生命と健康をともに守り、ともに支え合う共生社会の社会保障基盤を創る」決意で締めくくった。

今回の質疑は、医療機関の深刻な経営状況を政治の場で鮮明に浮き彫りにした。病院団体の調査でも医業赤字病院が7割に達する異常事態が報告されており、年末の診療報酬改定や来年度予算編成での対応が急務となっている。