2025-08-31 コメント投稿する ▼
那覇市歴史博物館が閉館 「駅から5分の国宝」19年の歴史に幕、文化財は首里の新博物館へ
「駅から5分の国宝」那覇市歴史博物館が閉館
那覇市の歴史や文化を発信してきた那覇市歴史博物館が8月31日、19年の歴史に幕を下ろした。2006年に開館して以来、「駅から5分の国宝」をキャッチコピーに、市民や観光客に親しまれてきた施設で、閉館セレモニーには多くの市民や関係者が集まり別れを惜しんだ。
「国宝が駅前にあるのは誇りだった」
「閉館は寂しいけど、新博物館に期待したい」
「文化財が首里に移るのは本来の姿かもしれない」
「市民にとって身近な歴史教育の場がなくなるのは残念」
「これからは研究や学習の拠点として継承してほしい」
尚家文書を基盤に開館
同館は、琉球王国・尚家22代当主の尚裕氏(故人)が1995年に尚家関係の文書などを那覇市へ寄贈したことを契機に誕生した。国宝を含む文化財を所蔵し、2006年7月に開館。那覇市中心部のパレットくもじ4階というアクセスの良さもあり、観光客や研究者、市民に広く利用されてきた。
閉館セレモニーと市民の声
閉館当日の午後7時、セレモニーが開かれ、古謝玄太副市長は「『駅から5分の国宝』として多くの方にご愛顧いただいた」とあいさつ。シャッターが閉じられると、市民から「ありがとう」の声や指笛が響き、会場は温かい別れの空気に包まれた。
09年から12年まで館長を務めた我謝幸男さん(70)は「文化財があるべき場所に帰っていくことになる」と語り、長年の役割に感慨を示した。歴史資料室で勤務した宮城晴美さん(75)は「資料室は残る。市民の学習や研究に役立ててほしい」と期待を寄せた。
文化財は首里の新博物館へ
市所有の文化財は、沖縄県が整備を進める首里の中城御殿跡地御内原エリアに、2026年以降に開館予定の新しい博物館へ移管される予定だ。首里は琉球王国の中心地であり、文化財を歴史的背景にふさわしい場所に戻すことで、保存と発信の拠点を強化する狙いがある。
歴史をどう継承するか
閉館により、那覇市の中心部から気軽にアクセスできる「駅前の国宝」は姿を消す。しかし文化財は新たな拠点に移り、歴史的文脈の中でより深く活用される道を歩む。市民にとっては一抹の寂しさが残るが、研究と教育の場としての継続性は担保されている。
那覇市歴史博物館の閉館は、地域に根差した文化施設の役割を再確認させる出来事となった。新博物館がどのように歴史を未来へと継承していくのかが注目される。